[映画/ドラマ/映像]THE 1900 HOUSE(07:掃除も大変/ホコリでいっぱい:3話目)

1900 House

著者/訳者:Mark McCrum Matthew Sturgis

出版社:Channel 4 Books( 1999-09-10 )

ハードカバー ( 192 ページ )



※こちらは『THE 1900 HOUSE』の資料本です。


2話目『洗い物は大変/衣装と洗濯』感想の続きです。

掃除は大変

メイドさんを雇う必要性を話す前に、もうひとつだけ、家事が大変だった事情を説明しなければなりません。洗濯と双璧ともいえる大変な家事の掃除の解説です。便利な掃除機が無くても掃除は簡単と思われるかもしれません。箒があれば間に合うと考えてしまいますが、部屋の汚れ方は普通ではありませんでした。

このドキュメンタリーを見た当時思ったのは、日本との相違でした。江戸時代や明治時代の日本家屋に詳しくありませんが、掃除が非常に大変だったと言う話はあまり聞きません。はたきや雑巾がけ、あるいは畳の上に出がらしのお茶の葉を撒いて掃き清めるぐらいが思い浮かびます。

日本との相違で大きな点は、石炭です。

要因1:石炭は部屋を汚す

英国は寒い気候であり、また水が豊富ではないので森林の回復力は日本よりも低く、木材が豊富にあるとは言えません。造船による消費、産業革命期の製鉄による消費で大量伐採が進んだ経緯から、燃料として薪を使うのは贅沢なことでした。英国では安価に石炭が採掘できるようになると、家庭用燃料となりました。しかし、薪と異なり、石炭は煤で暖炉やレンジを汚しました。石炭の白い灰も飛散する可能性があり、周囲を汚します。石炭の使用で掃除する手間が激増するというのが、日本との相違として挙げられるでしょう。

石炭は暖炉やレンジも汚し、煤を落とさないと錆の原因にもなります。服の汚れにも煤は少なからず関連しています。メイドの仕事のほとんどはこの石炭との戦いともいえました。

ヴィクトリア朝時の男性はほとんど家事にタッチしませんでしたが、ドキュメンタリー中、妻を助け、家族の平穏を守るため、父Paulは仕事が無い日は台所の床を雑巾で磨いたり、洗濯の手伝いをしました。そうしなければならないほど、家の中はひどく汚れていました。ところが、2005年に映像を見直すと、記憶が必ずしも正確ではなかったと気づかされました。母Joyceが箒をかけていると、ベッドの下や様々なところで、石炭によらない「白いホコリ」が、物凄い量で溜まっているのです。

要因2:繊維

当時の女性のスカートの裾は長く、床を引きずることから「掃除機」的にホコリを集めたとも言いますが、あのホコリは繊維質のもの、つまり服飾や絨毯、それにテーブルクロスやシーツ、さらにベッド(羽毛?)などから出た物ではないかと推測しています。以前、久我は手織りのセーターを買いました。ところが手織りで毛糸が柔らかかったのか、あちこちに繊維が飛んでいきました。しばらく着てれば落ち着いたかもしれませんが、周囲や、上に羽織ったコートの汚れを考慮して、結局使用を諦めました。

当時と現代では素材の相違や強度に差があったのではないかと考えられます。また、映像を見ると、ベッドの付近が特にすごかったので、毛布や布団があやしいとも思えます。

もうひとつ、建物の構造も汚れを吸いやすかったのでは、と思います。家中に暖炉があり、暖炉は外と繋がっています。暖炉に火を入れているときは熱による上昇気流で空気は外に出て行きますが、火を消すと中に入ってくる可能性もあります。

以上は考察の域を出ていませんが、いずれにせよ、「1900年の家は、きちんと掃除をしないとすぐにホコリで汚れていた」という結果が出ています。

ホコリが溜まりやすい環境、整備が必要な暖炉やレンジなどはメンテナンスを必要として、それが家族だけで負担するのは厳しくなり、メイドを雇うことになったのです。

読者の方より~ヨーロッパの事情

以下、サイトを見てくださった方より「ホコリが溜まりやすい」点について、実際にヨーロッパで生活されている観点から(フランスに滞在中)、興味深いメールをいただきました。ご本人の許可をいただきまして、2005/12/25に、以下に転載しました。許可をいただけましたこと、感謝しております。

現在私はフランス中部にこの初夏から長期滞在中です。

鉄筋コンクリートの比較的現代的なマンションに住んでいますが、こちらのページの記述のごとく、毎日毎日、膨大な量のほこりに悩まされています。暮らしてみて、原因として思いつくものがあるので、記してみます。

まず、気候です。
とても乾燥しているので、ともかくほこりが立つ。
この乾燥っぷりは、日本からはとても想像がつきません。

また(これは5~7月のことでしたが)、まさに「白いホコリ」としか形容のしようがない花を咲かせる木が、町のいたるところにあったせいで、初夏はどこもかしこもホコリの玉だらけでした。

それから、「土間」がないこと。

靴を脱がず、段差もなく、土足でどんどん家の中まで上がってしまうから、外のほこりや土、砂を持って入ってしまい、結果的にそれがほこりを集めています。日本家屋では、はいて地面へ「落として」しまえますが、ヨーロッパでは、すべてが平面の上にあるため、非常に難しいです。

最後に、これは土間がないことにも関連しますが、冬の長いヨーロッパでは、冬を基準に家が作ってあるので、通気性よりも断熱性が優先されています。どんなに窓を開け放っても、換気の程度は、日本のそれと雲泥の差があります。

以上、フランスからの考察です。イングランドの気候とは随分違うのかもしれませんが、おそらく3つ目・4つ目はあてはまるのではないかな?と思います。

ということで、ヨーロッパ的な風習も大きく関与しているようです。大変参考になりました。仮にヴィクトリア朝であれば外を歩けば馬草や馬糞が道路に転がっている可能性も高く、尚のこと、汚れる可能性は高そうです。

また、使用人のなり手不足に陥った20世紀初頭に記された書籍などでは、「使用人がいなくても済むように汚れないようにする」暮らしの工夫を提案しており、その中で気になったのは「靴の泥を落とすマット」や、過剰な装飾品・インテリア用品で家を飾ることが「埃を蓄積させる」として、こうした装飾を配する提案を行っていたことです。

埃が出やすく、汚れやすく、また溜まりやすい環境にあったといえるのではないでしょうか。


1話目『出演する家族を募集』
1話目『家族が実際に暮らす家を再現する』
2話目『生活が始まる/レンジと衛生』
2話目『食べ物/買い物と食事』
2話目『洗い物は大変/衣装と洗濯』
3話目『掃除も大変/ホコリでいっぱい』
3話目『メイドさんを雇う』(2005/02/28)
3話目『肌で感じる1900年(上)/髪を洗う』(2005/03/04)
3話目『肌で感じる1900年(下)/衣食住』(2005/03/04)
最終話『メイドさんと向き合う』(2005/03/13)
最終話『End Of An Era』(2005/03/17)

旅行記:2005年秋・『THE 1900 HOUSE』の街へ行ってみた

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『MANOR HOUSE(マナーハウス) 英國発 貴族とメイドの90日』
『Treats From The Edwardian Country House』