[漫画]プリーズ、ジーヴス

英国で著名な作家P.G.Wodehouseの大ヒット作で、その人気は「ホームズに並ぶ」ともいわれる、使用人・ジーヴス(Jeeves)を主役とした一連の人気シリーズがコミックスになりました。無理難題に何でも完璧に応えてくれる、有能で完璧な使用人として名高く、ネットに詳しい方は検索エンジンのAsk Jeeves(現在はJeevesの名を外していますが)で御存知かもしれません。

日本ではあまり有名ではありませんが、5年前に森村たまきさんの翻訳により、国書刊行会から『比類なきジーヴス (ウッドハウス・コレクション)』として刊行が始まり、私もその当時に小説『比類なきジーブズ』(2005/05/02)として感想を書きました。

当時はジーヴスを執事として認識していましたが、コミックスの解説にも出ているように、ジーヴスは厳密にはGentleman’s Gentlemanで(紳士づきの紳士)、正式な役職名は、主人に一対一で仕えて身の周りをするヴァレット(valet)です。

年代的には20世紀前半を舞台としており、第一次世界大戦後ぐらいの雰囲気でしょうか。『名探偵ポワロ』のドラマ版に似ている雰囲気ですね。ピンポイントに好きな時代な上に、名作と知りながらも私がこれまでジーヴスを大きく取り上げてこなかったのは、Wodehouse流のユーモアが、私にあまり馴染まなかったからです。

これは好みによるのですが、一度苦手意識ができてしまうとなかなか読みづらく、その後、しばらく手を出していませんでした。コミックス化の話も聞いていたものの、なかなか手を出さずにいましたが、最近ようやく読んでみると、これがとても面白かったので、感想を書いている次第です。

私が好きな感じの少女マンガらしい勝田文さんの絵柄と、コミカルなタッチが非常にあっており、ジーヴスのイメージが、とても素敵です。原作小説では、私にはやや主人公のバーティが馬鹿すぎ、ジーヴスの在り方もややきつい印象があったのですが、勝田文さんの絵柄は私の苦手な要素を中和していました。

ジーヴスを驚嘆させる趣味の悪さ・バカさ・お人よしさを発揮するバーティーの表情やお気楽さに愛嬌がありますし、普段は淡々と仕事をするジーブスが、主人の趣味の悪い服装に接した時の表情は、何度読み返しても面白い味があります。

メイドというより、ウェイトレスもそこそこ重要な役割として出てきており、その辺りでも面白いです。メイド喫茶的に連想されるイメージは、こちらの方が近い雰囲気はしますね。森村たまきさんによる時代背景の解説も学びが多く、何回でも楽しめます。

『エマ ヴィクトリアンガイド』の著者・ライターの村上リコさんも小説や英国でのドラマ版を紹介していたり恋の季節ですか?(ジーヴス・シリーズについて)(2007/11/13)や、コミックスについても漫画『プリーズ、ジーヴス』(2008/03/03)の中で紹介されていますので、是非そちらも。私より、原作への思い入れや愛がありますので。

私はちょっと構え過ぎて、原作を読んでいたのだと思います。このコミックスを読んでから小説を読み直すと、以前より、もっと楽しめるような気がします。肩の力を抜いて楽しめるシリーズです。