ヴィクトリア朝を詳しく知ろうと考えた時、和書ではこの本を最初に買いました。講談社の新書で、値段も高くありません。内容的に当時の社会情勢を把握できる大きな構成でありながらも、細部に至るまでをしっかりとフォローしていて、導入書としては最適です。特に巻末の年表は、世界史を高校時代に学んでいなかった自分には新鮮でした。
ナイチンゲールの話があったりして、彼女の著作を読みたくなりますし、奴隷制度や大英帝国の植民地政策といった部分にもしっかりと光を当てていますし、当時の労働者の生活から上流階級の暮らしまで、初心者に親切な作りです。
この本が秀逸なのは本の分厚さに比して巻末の参考文献が非常に多いことです。また、資料集を買うときに重要なのは、「その著者がいい視点で物を見ているか?」です。
ヴィクトリア朝研究の中で、長島伸一先生の著作は良いバランスだと、個人的に感じます。他には川北稔先生が素晴らしい本を数多く書いており、この分野に足を踏み入れれば、必ず目にすると思います。
長島伸一先生はこの他に、『世紀末までの大英帝国』を記しています。この本は資料・図表が圧倒的に充実しており、一読の価値があります。法政大学出版局の本はさすが大学だけあって、随分と勉強になります。