[参考資料]イギリス史 (世界各国史)

イギリスの歴史をその起源から現代まで広範に取り扱った書籍で、教科書でおなじみ山川出版社から刊行されている世界各国史の1冊です。川北稔先生が書かれています。山川出版社のフレーズで響くものがある方は、『図説 イギリス史』とセットで本書を買うと、より分かりやすいと思います。

英国の現代までの概要的な流れとしては、ノルマン・コンクエスト、チューダー朝の成立、清教徒・名誉革命以降の3つに分かれると思います。

イギリスは中世から近世まで、ヨーロッパ大陸の中では小国に過ぎませんでした。ノルマン・コンクエストはフランス・ノルマン系貴族による英国征服であり、ここで土着の貴族が滅ぼされ、新しい貴族が誕生し、英国内部で大規模な土地所有の移動がありました。軍事力がすべてを決め、地主に支配された農民が人口の大規模を占める中世です。その後、王となった彼らがフランス出身で現地に拠点を持つが故に、フランスとの対外戦争が繰り返すことになります。

そしてフランスとの争いから脱却し、イギリス近世国家を打ち立てていったのがヘンリー・チューダー(ヘンリー7世)です。国内の紛争となったばら戦争で勝利を収めた彼は王権を確立して、絶対王政への道筋を描いていきます。国内は安定し始め、商工業の勃興が始まるのも、チューダー朝です。

その息子ヘンリー8世は離婚問題でローマ・カトリック教会と決別し、教会や修道院が所持した莫大な所領を没収し、王室財政を強化します。また、これら領地を王室は貴族へ売り払い、ノルマン・コンクエストと同様の所有権の移動が生じました。これが英国貴族の足場を築くきっかけになったともいえます。

その後、17世紀半ば以降に清教徒革命と名誉革命で王権が抑制されて議会政治へと推移していきます。主導権を握っていたのは地主や貴族たちでしたが、土地に依存した財務構造に支えられた彼らと、海外から富をもたらしたり工業で財を成す新しい商工業の誕生と発展が国の構造を変えて行き、豊かさになる基盤が増加・変化して行きます。

後の流れは『イギリス近代史』と同一ですが、フランスと戦争をしていたのは何故か、イギリスで産業革命が起こりえたのは何故か、絶対王政が長続きしなかった理由など、イギリス独自の身分制度や文化を丁寧に掘り下げていて、初めて英国史を学ぶ人にも適した本になっていると思います。

多くの点で、法律や制度が国の方向性を決めているのが浮き彫りになる一冊です。