[漫画]エンバーミング


コミックス『エンバーミング』はフランケンシュタインをモチーフにした作品です。ヴィクトリア朝末期を舞台にした物語はゴシック・ホラーに必要な要素がぎっしりと詰め込まれています。フランケンシュタインの超人性を発揮したアクション主体で、『るろうに剣心』『武装錬金』の作者である和月伸宏さんらしい作風です。

ヴィクトリア朝を舞台にした作品は、上流階級のロマンス、ディケンズに代表される家族・人間ドラマ、『シャーロック・ホームズの冒険』や吸血鬼など犯罪や怪奇系などありますが、本作品は犯罪・怪奇系になるでしょう。『ドラキュラ紀元』的な方向、というのが近いでしょうか。

ただ、アクションシーンは激しいものでありながら、ヴィクトリア朝にしか成立しない風景や設定が盛り込まれており、舞台がしっかりしている分、伸び伸びと暴れまわっている印象です。読者の楽しみを広げるため、当時の社会背景が解説されていたり、その時代を生きた実在の人々が出演するなど、細部でこだわっています。

藤田和日朗さんの『黒博物館スプリンガルド』も歴史考証を設定に取り入れているように、この領域で資料性を取り込んでいるのも時代でしょうか。(私が意識するようになっただけかもしれませんが)

少し大人しめの感想ですが、キャラクターが縦横無尽に駆け回る姿や台詞回しはとにかく和月さんらしく、カッコいいです。最新4巻の登場キャラクターが好みすぎですし、勢力が入り組んでいて、この先がどう展開していくのか楽しみです。

最後に、私が和月さんの作品で好きな要素の一つが、「キャラクターファイル」です。出演したキャラクターの設定を作者自らが語り、方向性や裏事情を紹介してくれます。物を作る大変さも伝わってきますし、読んでからもう一度作品を読むと楽しさが増します。