[映画/ドラマ/映像]THE 1900 HOUSE(05:食べ物/買い物と食事:2話目)

1900 House

著者/訳者:Mark McCrum Matthew Sturgis

出版社:Channel 4 Books( 1999-09-10 )

ハードカバー ( 192 ページ )



※こちらは『THE 1900 HOUSE』の資料本です。


2話目『生活が始まる/レンジと衛生』感想の続きです。

予算内での暮らし

今回は中流家庭ということで、予算を決められています。当時の中流階級は下層中流階級から上層中流階級まで幅広いものでしたが、だいたい年収300ポンド以上でメイドを雇ってそこそこの暮らしをできたと考えられます。Bowler家1週間の生活費を4ポンド(食費のみ?:年収4×52週で208ポンド)に制限されましたが。

当時の通貨を日本円に換算するのはなかなか難しいものです。なぜならば、このドキュメンタリーが作成された10年以上前の英国ポンドは250円以上だったはずですが、2010/10/31現在は128円ぐらいです。過去との比較でかつ、国の通貨をまたぐ場合の計算式は複雑ですが、ざっくりと2.5~5万円前後ではないかと考えられます。

当時の通貨で考えると、4ポンド=80シリング=960ペンス。6人家族で考えると、ひとりあたり1週間で160ペンス。1日3食×7日とすると、160÷21で、1食当たり8ペンスぐらいの予算です。この金額は多いのでしょうか? 少ないのでしょうか?

過去に同人誌で取り上げたある公爵家の夕食にかかる費用と比較すると、コストが明らかに違います。公爵は16シリングを1回のディナーで費やし、使用人も1シリング以上の食事を食べていました。その上、屋敷に住む使用人は、猟鳥、鹿肉や、屋敷が所有する乳牛から供給される新鮮な牛乳やバターも得られました。この為、カントリーハウスなどの裕福な屋敷に勤める使用人と、メイドを雇える中流階級の食事内容では、使用人の方が恵まれていることもありました。

もちろん、多くのメイドは中流の家庭に勤めていました。「大きな屋敷の使用人よりも低い水準の食事を食べていた中流階級」に仕えるメイドの食事内容は、推して知るべしです。19世紀半ば以降に刊行された家政マニュアル本『ミセス・ビートンの家政読本』によると、このクラスの年収ではだいたい、すべての仕事を一人でする「メイドオブオールワーク」を雇うのが限界でした。当初、この家にメイドはいませんでしたが、雇わなければならなくなりました。その理由は、後述します。

買い物はどうしていたか?

一般に描かれるヴィクトリア朝中流家庭では、女主人が買い物をしたりせず、出入りの商人が注文した品物を配送してくれます。支払いはツケておき、請求に応じて一括で済ませました。

ドキュメンタリーの中ではパン屋が籠にパンを盛って姿を見せたり、肉屋が肉の塊とソーセージを持って来たりと、意外と生活は楽しそうです。(厳密に言うと、商店への注文が先にあり、訪れてきた商人が手持ちの品物から購入物を選んでもらう、ということはあまり無かったように思えます)

牛乳は新鮮なものが都市では入手しにくかった歴史を踏まえ、今回は食卓に出てきません。卵も高価なので食卓にありません。しかし、卵は母ジョイスの誕生日プレゼントとして、家族がニワトリを数羽買うことで補給しました。調味料も、当時のパッケージをあしらっていますが、現代的な中身のようですし、乾燥した「マカロニ」も揃っています。意外と、食は充実していそうです。

生鮮野菜は近所のお店に買いに行くことが許されました。そこでもルールが厳密に定められ、当時入手可能だった野菜や果物以外は購入出来ません。屋敷の住人が恵まれた理由は幾つもありますが、屋敷に備え付けの温室や庭園から豊富な野菜が供給されていた点は非常に大きいです。

カントリーハウスを所有する貴族がロンドンに出てくると、彼らは乳製品、野菜、それに肉類まで、屋敷から取り寄せました。それだけではなく、「洗濯物」さえも、地元に送り返して、洗濯させた家庭もありました。こうした「補給線」が無い一般庶民は、社会の物流が発展するのを待つしかありません。

ヴィクトリア朝の価値観(主に中流)では本来、女主人は自ら生活物資の買い物に行くべきではありませんが、使用人が不在であったり、使用人に任せるとコストが高くつくことがありました。出入り商人と結託して、使用人が実際よりも高い額を請求し、その差額を商人と折半して、私腹を肥やす事例は事欠きません。それは犯罪というより、手当てのようにもみなされていました。

『英国ヴィクトリア朝のキッチン』には戸別訪問の話ではなく、食糧品店(生協も)での買い物について細かく記されています。小説やドラマでは描かれることが少ないでしょうが、こちらの買い物事情も面白いです。何よりも、あらかじめ値段が決まっているので、使用人が手数料を得る余地が介在せず、このシステムは好意的に受け止められました。(実入りが減る使用人にとっては好ましくないですが)

次回は衣装と、洗濯事情です。ここでようやく、「なぜメイドを雇わなければならなかったか」が説明されます。


1話目『出演する家族を募集』
1話目『家族が実際に暮らす家を再現する』
2話目『生活が始まる/レンジと衛生』
2話目『食べ物/買い物と食事』
2話目『洗い物は大変/衣装と洗濯』(2005/02/26)
3話目『掃除も大変/ホコリでいっぱい』(2005/02/27)
3話目『メイドさんを雇う』(2005/02/28)
3話目『肌で感じる1900年(上)/髪を洗う』(2005/03/04)
3話目『肌で感じる1900年(下)/衣食住』(2005/03/04)
最終話『メイドさんと向き合う』(2005/03/13)
最終話『End Of An Era』(2005/03/17)

旅行記:2005年秋・『THE 1900 HOUSE』の街へ行ってみた

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関連番組

『MANOR HOUSE(マナーハウス) 英國発 貴族とメイドの90日』
『Treats From The Edwardian Country House』