[同人誌]ヴィクトリア朝の暮らし 3巻 貴族と使用人(二)

解説・補足

1巻発行から2年、ようやく女性使用人、メイドさんについての解説が始まりました。1巻・2巻で扱ってきた「貴族」「カントリーハウス」「上級使用人」については、ネットや同人誌の世界ではほとんど扱われていない視点でしたので、書く分にはそれほどプレッシャーはありませんでした。

しかし、3巻から始まる「メイドさん」は既に情報が多く出ていて、研究対象として扱うのには大きなプレッシャーがありました。ある程度の情報を持つ読者に対して、どのように本同人誌の特性・オリジナリティを出していけるのか? どこかで読んだことがある内容ならば、自分が作る意味がありません。

いちばん英書を読み込み、いちばん苦労した本です。

原稿が完成した頃、『エマ ヴィクトリアンガイド』が刊行されました。その内容とクオリティは驚きのもので、比較対象を市販の和書で見つけるのは難しいでした。『エマ ヴィクトリアンガイド』は総合書として「メイドさん+ヴィクトリア朝」全体・多くの読者層の開拓を行ったのに対し、当同人誌はいろいろなものを扱う余裕・パワーが無かったのが幸いしました。

「メイドさんに特化」されており、使った資料も違えば、見方も違いましたし、与えられたページ数も違います。自分が作ってきた原稿とは重なるところが少ない・ほとんどなく、そうした点で、『エマ ヴィクトリアンガイド』と戦える(KO負けでも1回はダウンを取れる、もしくは一緒に戦える)という自信にもなりました。

各メイドの仕事解説のみで言えば、『エマ ヴィクトリアンガイド』より細かく詳しく出ています。

特にこの3巻では、今までに入手した市販の和書・同人誌(どこかで研究者が論文にしているかもしれませんが)には無い2つの視点を提供しました。ひとつは「パーラーメイド」の項目で書いた、「屋敷案内」という仕事(実際はハウスキーパーの職分でしたが)、もうひとつは「ランドリーメイド」について、です。

小説部分も書いていて楽しく、誤植・デザインを除けば、同人誌として高い品質の本に仕上げられました。この本の経験が次に生きれば、最新作が常に最高の本になるでしょうが、正直なところこれを超える本を自分でもう一度作れるかといわれれば、自信がありません。この時期に持てるすべてを出し切った本です。

同人誌の情報

発行:2003年12月発行(絶版)
B5判:108ページ→A5に変更
頒価:600円
オフセット印刷

目次

■第三章 女性使用人(一)
女性使用人について
なぜ女性使用人は多かったか?
職を得る
紹介状~Referenceまたはcharacter
契約
制服

■第四章 メイドさん(家政系)
・パーラーメイド
・レディーズメイド
・ナースメイド
・チェインバーメイド
・ランドリーメイド
・ハウスメイド

■参考文献集

■ショートコラム・荒涼館

■終わりに

■付録・英書資料翻訳

お詫び

巻末付録のページにて、久我の作業にミスがありました。本来は巻末から「1・序文、2・翻訳上の注意、3・本文」なのですが、1・3・2と、順番が逆転していました。申し訳ありません。当日はその旨、告知をします。

交換は出来ませんので、あらかじめご諒承ください。