ドラマ『Under the Greenwood Tree』トマス・ハーディの『緑の木蔭』という邦題の小説が原作です。田舎街Mellstockで、美しくエレガントな彼女を巡って、三人の男たちが争います。トマス・ハーディーにしては喜劇的で、農村で生じたドタバタ劇という印象です。
ヒロインを巡る「理想の結婚相手」
ドラマは1時間半ぐらいで、比較的わかりやすい構図です。しかも、図らずも「使用人の恋愛」が裏にありました。主人公のFancyは都会で教育を受け、学校教師としてMellstockに赴任します。そこには彼女の父がいます(故郷ではない?)
主演は、サラ・ウォーターズの『Tipping the Velvet』で、ヒロインの片方を演じたKeely Hawes、きっと若手の実力派女優なのでしょうね。実は、この後に紹介する『Wives & Daughters』でも、彼女はヒロインのひとりになっていました。そのうち、映画などで有名になるんでしょうかね?
残りの男たちはどうでもいいです。(適当)
「教養は無いし、お金も無いが、若くて魅力的な」酒造家の息子Dick、「年老いて粗野なものの、金はうなるほどある」地主のShinar、「寛容ではないし、人間的魅力が少し乏しいものの、教養はあるし芸術に造詣が深い」牧師Maybold。なかなかに難しい選択肢の中から、彼女は婚約者を選ぶ、という設定です。
素朴に好意を寄せてくるDickにFancyは強く惹かれますが、父親は娘が身に着けた教養を「社会上昇」に使って欲しいと、Shinar氏との結婚を強く望みます。Shinar氏は父を抱きこみ、あの手この手で、Fancyに返事を促します。
一方、DickとFancyは好意を持ち合うものの、すれ違いが続き、階級というか教養というか、そうした差がふたりを隔てようとしている、というニュアンスでしょうか。いろいろとあって父が密猟者用の罠にかかったところを、Dickが助ける、しかしDickは医者を呼べるのは金持ちのShinarだと思い、自分が助けたのを隠します。FancyはShinarが恩人だと、思い込みます。
心が揺れるFancy、しかしあとで父を助けたのがDickだと知り、彼女はShinarの申し出を正式に断ります。ところが、ShinarはFancyが好きなのは、牧師Mayboldなのだと誤解し、「彼女を頼む」と牧師に頼んだから、大変なことに。
元々、音楽を通じて、また教養レベルが近しいことから、Fancyに好感を抱いていた牧師。Shinarの話を聞いて、気持ちが加速し、プロポーズに行きます。しかし、速攻で拒絶。牧師、可哀相過ぎる展開です。
いろいろとあって、結局、DickとFancyが結婚し、牧師は海外に去っていく、という話です。書いていて、全然、面白さを伝えられません。
コメントが難しい
正直なところ、あまり書くことがありません。ハーディらしくないというか、話の中に大事なエッセンスが感じられません。ドラマ化がいけなかったのか、心に響きませんでした。ただ、これは喜劇と始めからわかっていると、楽しめるのではないかと。
映像の意図も不明です。「大きな緑の大樹」が、タイトルを示すように季節の変わり目で何度も登場するのですが、その大樹の下で恋人同士が語らうといったシーンが、一度も無いので、個人的には意味が分かりません。原作を読まないとダメでしょうか?
とはいえ、Dorsetという田園地方にこだわったハーディの気持ちは、少なからず映像に伝わっていました。Mellstockの村の人たちの素朴さ、音楽隊を組織する彼らの愉快な雰囲気、そこがこの作品の魅力でしょうか。
田園に生きる農村の人々が、今までのドラマではないぐらい、丁寧に、また好感を持って描かれていました。純朴で、暖かいんですね。人々は教会の聖歌用に演奏をしたり、クリスマスの日も街中を練り歩いています。しかし、牧師がピアノを村に持ってくると、彼らは用済みになります。
ピアノの演奏をFancyが担当し、その美しさは人々を魅了します。愉快でないのは、演奏隊の人たちです。彼らは教会に忍び込み、ピアノの中に油を垂らし、ピアノを使い物にならなくする……罪があるようで、無いような。普通、このような人たちは、主役になれないでしょうね。そこに、ハーディの視線が向いていたのだとは思います。喜劇です、きっと。
唯一、Fancyの父がGamekeeperだったこと、彼がかつて勤めていた屋敷の主人の姪と駆け落ちした、その設定が久我の心に残りました。
「満足度」
ストーリー:★★
背景・衣装:★★★
キャスト :★★(男が魅力的でないです)
費用対効果:★★
村の親父 :★★★★★
JP AmazonではUS版のDVDがあります(Region 1なので普通の日本の機器では再生できない)。
※上記感想は過去に日記に書いた感想Under the Greenwood Tree(緑の木蔭)(2006/05/21)より再構成しています。