[同人誌]ヴィクトリア朝の暮らし 2巻 貴族と使用人(一) 上級使用人

解説・補足

1巻では「貴族」という主人と、「カントリーハウス」という職場を扱いました。そして2巻でようやく、使用人が出てきます。

大勢の人間が働く環境は、今の会社組織に似ています。会社員が多ければ多いほど、専門職が存在します。メイドと言っても「ハウスメイド」「キッチンメイド」「パーラーメイド」「ランドリーメイド」など、「職場や働く内容」によって名称を与えられるほどに細分化されていました。そして会社同様に、そうした人たちを束ねる管理職として、上級使用人が存在しました。

それらを紹介していくのが、2巻の役割でした。

この頃から英書を利用するようになり、資料を利用することで憶測や想像といった部分が減り、書くのにも慣れてきた感じがします。1巻だけでは不十分でしたが、この2巻によって、随分と読者の方に訴えられる内容が作れました。

といっても、いまだに解説で「メイドさん」は出てきていないのですが。

この巻からジョアンを迎えた使用人側の視点での物語が中心になりました。徐々に屋敷に順応しつつあるジョアンの暮らしも、彼らとの関わりで描かれます。子供は、屋敷によっては最も自由に使用人と接しました。後天的に身に着けていく階級差や身分差という意識を持たず、両親が出かけてしまえば使用人が最も身近な存在で、話し相手ともなりました。

あくまでも、「使用人たちの働く姿=屋敷に存在する理由」に焦点を当てているのが、当同人誌の強みだと思います。「地に足の着いたメイドさん像(といっても足は見えないのですが)」を追求した結実が、3巻で現れます。

同人誌として実際に即売会で結果が出始めたのは、この2巻が加わってからです。デビュー戦のコミケ63で初当選した際、いきなり完売しました。この方向性でいいのだと、確信を得させてくれた1冊です。

同人誌の情報

発行:2002年12月発行(絶版)
B5判:48ページ→A5/52ページに変更
頒価:300円
オフセット印刷

目次

■第一章 使用人
・オープニング

・使用人概論
なぜ必要|雇う側の増加|雇う余裕|使用人の種類

■第二章 上級使用人
・上級使用人

・執事
名前の由来|執事とは?|管理能力|外交能力|『品格』|生き方として

・ハウスキーパー
家事|物品管理|食料|お菓子と飲み物|収入

・ガヴァネス
背景|寄宿学校|立場の曖昧さ|就職まで|互恵協会

・ヴァレット
着替え|衣服と身の回り|旅のお供に|食事の席
■終わりに

■参考文献集

■二〇〇二冬コミペーパー再掲

※このページは、2020年にURL変更しています。