[漫画]シャーリー


『シャーリー』は、日本人が思い描く「英国メイドのかわいらしさ」を極限まで引き出した作品だと思います。メイドが持つ健気さ、仕事へのこだわりと自分を評価してくれる主人への献身。多くの人が、メイド服を着てくるりと回転して、スカートの裾をはためかせるシャーリーに魅了されたと(勝手に)思っています。

2011年の今にして思うと、『シャーリー』の鮮烈さは忘れがたいものがあります。独身女性ベネット・クランリー(飲食店経営)がメイドを募集した広告を出したところ、応募してきたのが、13歳の少女シャーリーでした。年齢を書いていなかったことや断ることをためらい、ベネットはシャーリーを試しで雇用してみますが、料理の腕に優れ、家事能力も高く、優秀なメイドだった、ということで2人の生活が始まります。

この作品を含め、同コミックスに収められている作品はすべて、森薫先生の同人時代のものです。この『シャーリー』は「思わぬヒット」となったと、森先生はインタビューで当時を振り返っています。

シャーリーは『エマ』2巻が出たとき、同時に出していただいたら、それが思わぬ部数になって…。担当さんは「同人の方が売れるって会社で言われるよ~。打倒シャーリー!」なんて冗談で言うんですが、あれは『エマ』があってこそのオマケで。オマケのほうが人気が出るのは、『エマ』よりも「遊び」が大きいからではないでしょうか(笑)。エマがなきゃ「なんだこのシロート漫画」って言われてましたよ、きっと。

ジャンプスクエア 森薫先生 直撃インタビュー 完全版より引用

同人でも大きな影響があったと思いますし、ネットでは相当扱ったように記憶しています。2003年に開催された森薫先生作品のエマ・シャーリー、そして創作メイドオンリーの同人誌即売会Sweet Maid Gardenでは、普段メイドをメインとしていない、でも作品が好きな作家さんが多く集まったのを記憶しています。そのうちの一冊、『週刊わたしの13歳』は、結構、話題になったのではないかと。

『シャーリー』以外にも森薫先生の原点的な同人時代の作品が掲載されており、2000年代前半の時点で、クラシックな雰囲気を持ち、程よいバランスのメイドイメージが既に描かれています。また、この時期から見ていくと、『エマ』における描写の進化と深化のスピードに驚かされます。

ちなみに、久々にAMAZONで『シャーリー』のレビューを読みましたが、2003年の刊行時点の感想に『「メイド」という言葉に偏見無く読んで欲しいなと思いました。』との言葉がありました。まだそれほど「メイド喫茶」が主流ではなく、この時点では、「日本のメイドさん」ともいうべきコンテンツを軸としたメイドブームが生じています。

今「メイド」といえば「メイド喫茶」がメディア上では主流で、世の中的な認知もそちらが大きいです。ある意味、日本で歴史的な意味での「メイド」イメージが、実際の職業とはかなり異なる形で解釈される状況が「自然」で、だからこそ歴史的に伴う偏見がなく、日本でブームになりえるのかなぁと思う次第です。

この辺は仮説『日本のメイドブームの可視化(第1~5期)』と、個人的に情報整理を行っていますが、「英国メイド」が主流になる日を夢見つつ、現実にできることを増やしていきたい昨今です。

まずは、『シャーリー』をお読みください。散発的にですが、今も続編が描かれていますし、『エマ』を経た森先生の『シャーリー』という作品もまた、ファンにとっては嬉しいものです。