[映画/ドラマ/映像]THE 1900 HOUSE(04:生活が始まる/レンジと衛生:2話目)

1900 House

著者/訳者:Mark McCrum Matthew Sturgis

出版社:Boxtree Ltd( 1999-09-10 )

ハードカバー ( 192 ページ )



※こちらは『THE 1900 HOUSE』の資料本です。


1話目『家族が実際に暮らす家を再現する』感想の続きです。

生活を支えるレンジ

ここでようやくNHK教育で放送された時と同じになります。まず家族はこれから住む Elliscombe Road 50番地に再現された1900年の家から少し離れたホテルに集まり、そこで着替えてから、馬車に乗せてもらい現地に向かいます。家の近くでは周辺住人が出迎え、手を振ってくれます。これに感動して泣く光景があったり、引っ越してきた家族は初日を平穏に過ごします。

しかし、いざ数日が経過すると問題が山積します。それらはすべて、レンジの火力不足から生じました。「湯が出ないなぁ」と放置した、アドバイザーのDaru氏。その被害を家族が受けました。今回番組スタッフが購入した石炭レンジは、家屋の給湯も担いますが、十分なお湯を供給しません。

現代人にとっての当たり前が当たり前でなくなる、これは相当なストレスになります。その上、火力が思うように調節できないので、普通に料理を作るのにも無駄な時間がかかりました。このことで、母親は感情をたかぶらせてしまいます。そうしたありのままの姿がテレビに映し出されるのが、この番組のすさまじいところです。さらに、暖かいお風呂を浴びてすっきり出来ないのも、苦痛となりました。

ヴィクトリア朝の頃でも給湯施設を備えた風呂の普及は今ひとつで、実際は大きな洗面器(小さなバスタブ・ヒップバス)に湯を足して、腰湯につかる、ということが多く、その意味でこの家は恵まれていました。しかし、急騰設備の不備でメリットを享受できないのです。

湯が蛇口から出なければ、湯を運ぶ選択肢もありましたが、そこまではしなかったようです。「銅の鍋」に匹敵する、大量の湯を供給可能な釜が「ランドリールーム」にあったのですが、使っていません。お湯を運ぶのは危険で、重労働だからでしょう。

レンジの修理は2度に渡りました。さすがに満足な火力が無いと、暮らしていけないと判断したのでしょう。1度目の修理でも解決せず、そうかといって2ヶ月探して見つけ出したレンジなので、代替品も見つからず、2度目は補強と言うか、ある程度の作り替えという段階にまでなりました。

若干レンジの構造が見えにくいのですが、レンジに給水管を通して暖める方式?のようでしたが、十分ではなかったようです。番組開始後、技師が2度目の修理を行ってようやく事態が改善し、お湯が出るようになってお風呂に入った母Joyceは、笑顔になりました。

給湯事情

ヴィクトリア朝などの時代では、お湯を使用人であるメイドが何往復もして運びました。給湯設備を家に備え付けるよりもメイドを雇うコストの方が安い事情もありました。レンジに備え付けてある給湯タンクや、台所や流し場にあると言われた、大き目の銅鍋で沸かした湯が風呂に使われましたが、そうした器具は風呂と同じ階にはなく、だいたいが使用人が働く職場=地下にありました。

地下からお湯を持って、階段を上がり、主人や客人がいる空間(たいていは2階以上)に運んでいたので、使用人にとって主人の入浴は大変な作業でしたし、お湯を沸かして身体を洗う入浴自体が大変だったので、使用人が風呂に入れる機会は限られました。

実在のメイドに取材した『イギリスのある女中の生涯』で、農村の家庭の風呂に入る光景が出ています。まず部屋にバスタブを出し、湯を足し、石炭を焚いた暖炉の前で入浴したそうです。1930年ぐらいの『ゴスフォード・パーク』では現代と同じ風呂が出てきて、使用人もそこにふたり一組ぐらいで入っていました。

使用人が風呂に入れる機会は限られており、1週間に1度は入れましたが、使用人を不潔にすることは主人たちには出来ませんでした。彼らは傍近くに仕えますし、人目に触れますし、仮に不衛生から伝染病などに罹患したとしたら、主人たちも影響を受けるからです。

トイレ事情

当時の衣装を着て当時の物を食べるだけの暮らしならば満足できますが、価値観である「衛生」については一定の環境に慣れた分だけ、そうでないところに行くと苦労します。それはキャンプなどで経験されている方も多いと思います。

お風呂に続く衛生環境と言えば、トイレです。この家は内部にトイレを持たず、外に作りました。トイレットペーパーは許されず、壁に打たれた釘に四角く切られた新聞がぶら下がっています。水洗トイレなのは、せめてもの情けでしょうか。(ペーパーもあったかもしれませんが、見えませんでした)

『MANOR HOUSE』でもそうでしたが、トイレが使えない時間帯(主に夜中)は、チェインバー・ポット(おまる)を使用する羽目になりました。実際、出てきた出演者はポットの中身を、朝、トイレに流していました。トレイ、トイレットペーパーは共に前述の資料『図説ヴィクトリア朝百科事典』に詳しいです。

長くなってきたので、続きます。次回は洗濯事情と、掃除環境などを。さらにその後で、食事情も書きます。


1話目『出演する家族を募集』
1話目『家族が実際に暮らす家を再現する』
2話目『生活が始まる/レンジと衛生』
2話目『食べ物/買い物と食事』(2005/02/25)
2話目『洗い物は大変/衣装と洗濯』(2005/02/26)
3話目『掃除も大変/ホコリでいっぱい』(2005/02/27)
3話目『メイドさんを雇う』(2005/02/28)
3話目『肌で感じる1900年(上)/髪を洗う』(2005/03/04)
3話目『肌で感じる1900年(下)/衣食住』(2005/03/04)
最終話『メイドさんと向き合う』(2005/03/13)
最終話『End Of An Era』(2005/03/17)

旅行記:2005年秋・『THE 1900 HOUSE』の街へ行ってみた

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関連番組

『MANOR HOUSE(マナーハウス) 英國発 貴族とメイドの90日』
『Treats From The Edwardian Country House』