『高慢と偏見』はジェーン・オースティンの傑作として、歴史に名を残した作品です。それをBBCが忠実に再現したのが、本作品です。日本ではNHKで放送されました。イギリスの様々なカントリーハウスを撮影場所として、屋敷や華やかな生活が大好きな人にはたまりません。
ダーシー卿を演じたコリン・ファースはこの役で人気を得ました。また、世界的にヒットした映画『ブリジッド・ジョーンズの日記』は『高慢と偏見』をモチーフとしていましたが、ダーシーをモデルとした役をコリン・ファースが演じるなど、面白いエピソードもあります。
既にご存知の方が多いと思うので簡単に書きますが、田舎に住むベネット家の五姉妹・次女エリザベスが主役です。ベネット家には男子がいないので、もしも父親が死ねば、相続権を持たない娘たちは家から追い出されてしまいます。しかし、裕福な家というわけでもないので、娘たちに多額の持参金は用意できず、結婚は難しい状況でした。
そうした五姉妹の前に、魅惑的な男性たちが姿を見せます。ひとりはピングリー。もうひとりはダーシー。ピングリーはこの界隈に住み始め、友人のダーシーも彼の住まいに滞在しています。やがて地元の社交界でピングリーは長女のジェーンと恋に落ち、次女のエリザベスはダーシーに興味を持ちつつ、彼の高慢に見える人を寄せ付けない態度を気に入らない……そこにハンサムな士官のウィッカムが登場し、エリザベスと親密になります。
この関係を軸に、人間関係は展開してきます。脇役も多彩で、原作は三回ぐらい読みました。お母さんの駄目っぷり(子供に恥をかかせる・場の雰囲気を読めない)、それに困る娘、気難しいダーシー卿、相手の話を何も聞かないで自分の都合で生きる従兄、それにシニカルなお父さん。それに恋愛のテンポや屋敷の描写などが好きでした。
お金のない女性の結婚が難しいという世界設定を理解すると、作品の中で「お金持ちの男性」との良縁を望む当時の女性たちの必死な姿が理解できます。同じオースティンの作品にある『分別と多感』は同じような状況ですが、最初に父親が死に、家族は屋敷から追い出されます。そうした物語の展開では、『高慢と偏見』の方が、より恋愛事件に徹底しています。
なお、『分別と多感』を映画化した『いつか晴れた日に』には、同じく『ブリジッド・ジョーンズの日記』に出演したヒュー・グラントがいます。ただ、こちらではやや「もっさり」しているので、この役では他の役のようにカッコよく見えなかったです。
時代背景はヴィクトリア朝の前の時代で、リージェンシー(摂政朝:精神に異常をきたしたというジョージ三世に代わり、ジョージ四世が摂政に就いた)ぐらいです。衣装や男女の関わり方はヴィクトリア朝よりも緩やかで、謹厳というより、時代には明るさがあります。
研究者の新井潤美さんの『自負と偏見のイギリス文化―J・オースティンの世界』もオススメです。