『螺子とランタン』は19世紀の英国を舞台にした作品で、幼い女侯爵ココと、彼女に仕える家庭教師(tutor)ニデルを中心にした物語です。貴族の屋敷を舞台にした設定も生かした作りながら気軽に楽しめます。
このところ、ヴィクトリア朝や貴族関係の話はリアル志向へ走り、使用人の手記ばかり集めると言う方向になってしまっていました。使用人の手記は飾りもありますが、本音のところも、その生き方も、小説以上に面白い・興味深いことが多いからです。
ところが、リアル志向は時に疲れます。その上、その資料が「使えるかどうか」で本の価値を判断もするので、純粋に楽しむことを見失いもします。
と言う長い前置きをしつつ、過去に自分のフィルタに引っかかりつつも、読んでいなかったコミックスが『螺子とランタン』でした。この筆者の方の作品群が書店に平積みされていたので、「あぁ、そろそろ読んで見ようか」と。今出ている方の表紙(上の画像は旧版)の方が、自分には手に取りやすかったのかもしれません。
「貴族」に対して良い感情を抱かず、頑なな態度をとるニデルは、ココと触れ合ううちに変わっていきます。この幼い女侯爵と、彼女に仕える家庭教師の話は癒しとなりました。
やっぱり、マンガはこうでなくては。
ぱっと読めて、明るい気持ちになれる。フィクションであればこそ描ける世界には、華があります。短い物語の中にも人間の感情が詰め込まれていて、絵のタッチも好みで、何でもっと早く読まなかったのかなぁとも思いました。
絵のタッチだけではなく、人物の表情、台詞回しも素敵ですし、1巻完結で、盛りだくさんな作品です。
※ブログで書いた『螺子とランタン』(2009/04/05)からの改訂版です。