ドラマ『名探偵ポワロ』から、職業制服を着た犯人/実際に使用人が犯人の話の考察

今回、冬コミ用に『名探偵ポワロ』を題材に、家事使用人やウェイトレス、ウェイター、ホテルスタッフなどの職業制服を考察する本を作っていて、ふと思ったことが、「職業制服を着て周囲に溶け込み、殺人事件に活用した話はどれぐらいあったっけ」というものでした。

参照:冬コミ予告・新刊『名探偵ポワロ』が出会った「働く人たち」ガイド 上巻と持ち込み同人誌など

そこで、職業制服を着ている人は、「その職業」として認識されて、個々人として認識されにくい・顔を見られにくい、という状況を利用したアガサ・クリスティーのトリックを、ドラマ『名探偵ポワロ』から掘り下げてみます。

本当は同人誌に書くべき題材なのですが、思いつくのが遅かったので、来年予定の下巻でもう少しきちんと書きます。同人誌の方では上巻で扱っている第1話「コックを探せ」から第34話「エジプト墳墓のなぞ」+第65話「オリエント急行の殺人」までの範囲で、使用人が犯人だった事件をカバーしています。

※以下、ドラマ『名探偵ポワロ』+アガサ・クリスティーの「ポアロ」作品のネタバレを含みます。未視聴・未読の方は読まないようにお願いします。
 
Amazonビデオ『名探偵ポワロ』 
Gyao! 『名探偵ポワロ』 
 
 
 
 
 
 
 
 
 

制服を着た犯人による「使用人・給仕役に扮した」殺人

ここからは記憶ベースとなりますので、漏れは後日対応します。

まず第32話「雲をつかむ死」が挙げられます。これは殺人を犯す歯科医が白のジャケットを機内に持ち込み、スチュワードに見える扮装をして、犠牲者となる乗客に近づいて殺人を実行します。席に座っている乗客は、眠っていたり、本を読んでいたりなど、あまり顔を上げないので、白っぽい服=スチュワードが通っても気にしない、という認識を利用した殺人でした。

次に、第36話「黄色いアイリス」も似たトリックです。ここでは、舞台での演奏があるレストランが殺人の現場となります。舞台で歌手が歌う際に照明が落とされ、レストランは暗くなります。席を外した犯人はウェイターの白いジャケット、白手袋を着用して、対象の席に近づき、毒を盛ります。給仕をされているテーブルに着席した人々も、基本的には舞台に注目しているので、ウェイター個人の認識をしません。

このトリックについてポワロは作中で検証を行いました。毒殺されたはずの女性をメイドに変装させ、立ち会った全員がいる場でコーヒーを給仕させたのです。この時、誰も彼女が給仕していることに気づきませんでした。

犯人が使用人に扮したという殺人では2種類あります。普段から使用人として入り込んでいた、第30話「猟人荘の怪事件」です。これは、元女優だった共犯者の女主人が、変装して臨時のハウスキーパーとして屋敷に入り込み、殺人を実施。その後、行方をくらますというものでした。制服や認識というところではあまり関係がなく、バレないようい度力していた点では少し今回の話とはニュアンスが違います。

ウェイターに扮した殺人に続くのが、第63話「三幕の殺人」です。これは名優が執事に扮して給仕を行い、殺人を行いました。事件後、執事は失踪しました。存在しない人間として家事使用人を演じる。これは「使用人」という立場が犯行の目くらましになることを物語っています。もちろん、当時の照明が今のように明るくない、というところも前提となっていたとは思いますが。

そして、「車掌の制服」も一種のトリックに使われました。第65話「オリエント急行の殺人」です。何者かが車掌の制服を着て車両に入り込み、殺人を犯す。そういう筋立てによるカモフラージュのための制服です。制服を着て近づいて殺人をする、というバリエーションに入りませんが、そう思わせるという点において取り上げました。

第56話「葬儀を終えて」の犯人のコンパニオンが語った、「コンパニオンや使用人の顔など誰も見ないでしょう」に尽きるでしょう。

実際に使用人が犯人の話

これは後ほど。以下は記憶の範囲なので、繰り返しですが正確なものは別の機会に。

・第03話「ジョニー・ウェイバリー誘拐事件」(共犯)
・第23話「プリマス行き急行列車」(共犯)
・第38話「イタリア貴族殺害事件」
・第41話「グランド・メトロポリタンの宝石盗難事件」(共犯)
・第51話「杉の柩」
・第54話「青列車の秘密」(共犯)
・第56話「葬儀を終えて」
・第57話「満ち潮に乗って」(共犯)
・第65話「オリエント急行の殺人」(共犯)

犠牲者もそこそこに。

・第46話「アクロイド殺人事件」(執事)
・第60話「第三の女」(乳母)
・第61話「死との約束」(乳母)

無実なのに罪を着せられた話もありますね。