[参考資料]図説 ヴィクトリア時代 イギリスの田園生活誌

いわゆる「古き良き時代」の青空と緑の田園、黄金の小麦畑が広がる、ヴィクトリア朝の農村の生活を扱った資料本です。ヴィクトリア朝というと、社会問題や都市の公害や貧困問題ばかりが取り上げられますが、この本は当時の「田園」、つまり農村の素朴な暮らしにスポットを当て、村の人たちがどんな家に住み、どんな仕事をして、どんな暮らしをしていたのかをイラストつきで解説してくれます。

値段はかなりの額になりますが、収穫の風景や農具、村に来る行商人、村に住む人々など当事の農村が鮮やかに切り取られていて、暖かい雰囲気を感じられます。ところどころにカラーのイラストもあり、美術館的な雰囲気ではない、素朴で美しい世界が紹介されています。

『世界名作劇場』に出てきそうな、穏やかな風景です。描いた作家たちは著名ではありませんので日本の美術展で見ることがほとんどない絵が多いですが、有名な画家の絵だけが当時を代表するすべてではありません。美術的価値以上に、当時の美しい田園と農村の風景を描けているので、個人的には大好きな資料本です。

集められた絵画の近いところでは、2010年02月まで府中市美術館で開催されていた『ターナーから印象派へ 光の中の自然』の展示を連想しました。

より道具と実用性に重きを置いた類書は図説 イギリス手づくりの生活誌で、農村に住む少女の風景を描いた作品としては『ラークライズ』や『農場に暮らして』、『イギリスのある女中の生涯』をオススメします。