私が研究をする中で出会った魅力的な英国の家事使用人である、侍女Roseや執事Edwin Leeなどが働いた職場・Astor子爵家を扱ったドラマなので購入しました。1982年BBC製作です。
ドラマは正直なところ、Lady Astorと息子Bobbieの関係性が強すぎ、夫のAstor子爵や子供たちの影が薄いように感じ、私の好みの描き方ではありませんでした。ただ、私は「家事使用人の目で見たLady Astor」しか知らないので、もう少し彼女のことを詳しく知っていると、楽しめたようにも思います。
Lady Nancy Astor(1879-1964,Astor子爵夫人)は女性初の英国国会議員(選挙で選ばれる議員)となった著名人で、本ドラマは彼女の生涯を描いています。彼女はアメリカの富豪Langhorne家に生まれました。wikipedia:Nancy Astorによれば、父は奴隷労働に依存したビジネスをしており、南北戦争敗戦で経済的苦境に陥るも、その後、Nancyが13歳の頃に財産を取り戻すとのことです。
ドラマではアメリカ在住の少女時代から始まり、父と喧嘩をしたり、自由闊達に動き回ったりと、あまり型にはまらない生き方をしていました。その後、18歳(1897年)でRobert Gould Shaw IIと結婚しますが、Nancyとの相性が極めて悪く、口論が続いたり、相手が酒浸りだったり他の女性に声をかけたりと、この結婚は不幸な結末を迎えました。一児には恵まれましたが(長子Robert Gould Shaw III、愛称Bobbie)、2人は離婚しました。
心機一転、Nancyは1905年に渡英して、その途上で知り合ったアメリカ生まれ・イギリスで長く育てられた富豪Waldorf Astor(1879-1952)と親交を深め、1906年に結婚しました。結婚のギフトは、かつてSutherland公爵やWestminster公爵家が住んでいた来歴を持ち、Astor家が所有する屋敷Clivedenでした。
Nancyは持ち前の機転やその奔放な性格で社交界の華ともなり、豪奢な屋敷Clivedenは社交の舞台となりました。Waldorfは1910年に国会議員の選挙に出て当選しましたが、父が亡くなったため爵位を継いで2代目子爵となり、貴族院議員となって、下院議員の資格を失いました。父は爵位を買い、Astor子爵となっていました。
Woldorfの後任としてLady Astorが立候補して当選したことで、彼女は女性初の国会議員となって政治活動を始めるというのが大筋の流れで、Woldorfの死で完結しました。火のように激しい彼女の性格やその政治活動、そして最初の息子で不出来なBoobieとの関係に重点が置かれている印象です。スラムに住む労働者相手の選挙活動やウィットに富んだ演説なども丁寧に描写していました。
魅力があるとすれば屋敷Clivedenと、実在した使用人たちを登場させた点です。Nancyが結婚した当初はMr Parrが執事を務め、この執事が解雇された後はEdwin Leeが継承して執事となり、家政を守りました。また、侍女Rose(Rosina Harrison)や、子爵のヴァレットArthur Bushellなども役として存在しており、マニアには嬉しい設定でした。著名な人物も登場し、撮影もかなり良い場所を用いたとのことです。
もう少し勉強してから見ると印象が違うかもしれません。