ヴィクトリア朝に関わる食品や衣装、生活用品、薬やクリスマスの風習、それに動物園など、今の生活に通じる様々な事物の起源や、当事どのように扱われていたかを、豊富な写真や図で解説してくれる良書です。
5冊だけ、ヴィクトリア朝関連の良書を挙げるならば、紛れも無くそのうちの1冊に入るのが、この『図説ヴィクトリア朝百貨事典』です。図説シリーズは名著が多いのですが、中でもこの本は当時の「モノ」を豊富な写真やイラストを駆使して、百貨店カタログのように「展示」してくれています。
「あ行」のアイロンから始まり、日常生活に存在した牛乳やお茶といった飲料から、クリノリン、バッスル、コルセット、靴や傘や手袋と服飾だけではなく、電信・電灯・電話と現代に続く原型となる技術や、動物園・アクアリウム・パノラマといった当時の人々が楽しんだ娯楽に至るまで、ありとあらゆる目に入るであろうモノが解説されているのです。
図版の多くはカラーとなっている上に、個々の解説の後ろには引用文献や関連書籍が紹介されていて、興味を持った人が調べやすい構成にもなっています。
このレベルで2,000円を切るのも、コストパフォーマンスが絶大すぎるもので、まったくヴィクトリア朝を知らない人でも、人間の暮らしに関心を持っているならば、十分に楽しめる内容です。ヴィクトリア朝に関心のある人には、より強く、物を通じて伝わる当事の風習や価値観を伝えてくれます。
改訂版が出ています。