[参考資料]台所の文化史

本書は古代から20世紀まで、時代ごとにどのような食べ物を食べていたか、どのような調理をしていたか、どんな器具を使っていたかなどが記されている、まさに台所関係の文化史です。とはいえ、アメリカとイギリスが中心になっていますので、あまり広範な内容ではありません。しかし、イギリスに関心のある人ならば十分に足りるレベルです。(同様に『暖房の文化史』も、イギリス中心でした)

使用人に関わる言及は文中で意外なぐらいに多く、18世紀~19世紀あたりの章で、詳しくふれています。当事の資料やエピソードを意外と多く引用していて、内容も翻訳者の方によって整理されており、読みやすくなっていますし、珍しいところでは紹介状のやり取りが載っています(記憶が正しければ)。

台所とはいいながらも、家政そのものを広く扱っているので、掃除や洗濯や家計について言及している箇所も多く、読んでいて普通に面白いです。アイロンのかけ方や、様々なレシピまで後半に扱っていて、所々に掲載されているイラストが分かりやすさに寄与します。情報の構造化が翻訳者の方によってなされていたと思うので、読みやすい編集がなされており、台所とそこに関わった人々に興味があれば、読んでみていい一冊です。

ただ、あくまでも「歴史」の本なので、レシピや調理方法などが細かく書かれていません。料理の再現を企図したものではないのです。最初にこれに手を出すより、他の書籍で家事や使用人への理解を深めておいたり、キッチン周りの話を知っておくとより分かりやすいと思います。