[参考資料]英国貴族の邸宅

英国貴族の邸宅 (ショトル・ミュージアム)

著者/訳者:田中 亮三

出版社:小学館( 1997-01 )

単行本 ( 127 ページ )


『図説 英国貴族の城館』がカントリーハウスの歴史や階下の事情までを扱った広範な作品、いわば日本に「カントリーハウスの基盤」という存在に対し、本書は18世紀にイギリスの建築家として活躍したロバート・アダムが建築にかかわった屋敷を取り上げています。

ひとつずつの屋敷を外観からインテリア、備えられている家具まで含めて、芸術的な価値が高いカントリーハウスの実像を照らしだします。ロバート・アダムの屋敷は個人的に色彩が淡く感じ、ぎらぎらするような絢爛豪華な贅沢さをしておらず、日本人好みなのではないかと思います。落ち着いて生活できそうな、居心地がよさそうな。

だからといってシンプルというわけではなく、やはり屋敷は屋敷です。私個人はこの本を読んでロバート・アダムのファンになり、巻末の案内を見て、ロンドンに近いKenwood HouseとOstelry Parkを訪問してきました。いずれの屋敷も貴族の住まいらしく、周辺を緑に囲まれています。

Kenwood House
屋敷へ通じる並木道

[旅行記][2005年秋・イギリス]Kenwood House
[旅行記][2005年秋・イギリス]Ostelry Park

『図説 英国貴族の城館』と同様に、本書でも様々な作品が紹介されています。なかでも私が最も影響を受けたのは、文中で紹介されていた1970年代放送のドラマ『Upstairs Donwstairs』です。使用人が主人公という作品自体が存在したことに驚き、それが当時1億人に視聴されたとの話に、もっと驚きました。このドラマのDVDをアメリカから取り寄せたことは、私の得難い財産になったと思います。それほど衝撃的であり、また家事使用人研究では絶対に欠かせない大きな存在感を持つ作品です。

最後に、田中先生の著作が面白いのは、日本への関心です。日本から輸出された陶磁器がカントリーハウスには美術品として収蔵されていて、その経緯を紹介しています。遠い異国へ日本の品物が伝わっている、そうした接点を見つけて楽しめるのも屋敷が美術館としての価値を持つ証明かもしれません。

まず『図説 英国貴族の城館』でカントリーハウスを理解し、その上で『英国貴族の邸宅』で個々の屋敷の美しさに魅了されることをオススメします。