[参考資料]アガサ・クリスティーの食卓

アガサ・クリスティーの食卓

著者/訳者:北野 佐久子

出版社:婦人画報社( 1998-07 )

単行本 ( 183 ページ )


アガサ・クリスティーの小説世界に登場する様々な料理や食文化を解説する一冊です。とても読みやすいです。クリスティーの作品には、『クリスマス・プディングの冒険』のようにタイトルに食べ物の名前が入るものから、『24羽の黒つぐみ』で出てくるブラックチェリーパイなど、印象的でありつつも、日本人と縁がないものが出てきます。

『シャーロック・ホームズ家の料理読本』が、当時のレシピとエピソードを混ぜすぎたのに対して、こちらはひとつのメニュー、たとえば「ステーキ・アンド・キドニーパイ」を扱うときは、小説内の描写を交え、登場した小説(この場合は『クリスマス・プディングの冒険』)のあらすじを1ページにコンパクトにまとめて読みやすい構成にしています。

そして、この情報の後に、筆者である北野さんの体験やコメント、料理のレシピが出てきて、しっかり編集されています。1メニューで3ページぐらいに集約されたシンプルな形式は、『料理読本』と対極にあります。但し、本書に「レシピ」「ノウハウ」的な内容を期待すると、失望します。短めの形式、筆者の主観、それに小説の解説があり、短い文章ではこうした内容は詰め込めません。

あくまでも、クリスティー作品のファンやイギリス文化に興味を持つ人向けの書籍です。この本の魅力は、ここで取り上げられたメニューを通じて、小説を読み直したり、新しい魅力を発見できることだと思います。また、北野さんの英国滞在時のエピソードが、暮らしや生活を好む人にとっては、大変興味深く、感心できる内容になっています。

料理に限らず、食文化というのか、「フォートナム・アンド・メイスン」「ピクニック」「ラベンダー香水」など、小説に出てくるイギリス文化を解説してくれるので、この本を片手にクリスティ作品を読むと、また違った味わいがあるはずです。同じ文化が残っていても、今と重さは違う。その重さの違い、見える日常の形式の違いを、小説や本書は伝えてくれます。

残念なことに、絶版のようです。