[参考資料]自転車に乗る漱石―百年前のロンドン


※このテキストは自転車に乗る漱石―百年前のロンドン(2005/08/01)から再構成しています。


村上リコさんの資料紹介#2 霧の都ロンドンで見て、購読した本です。元々、漱石は大好きなので飛びついてみましたし、あの時代のロンドンにいた日本人の小説はいつか書くつもりでいますので(構想だけは練ってあります)、その資料として、読み進めました。

内容は留学した漱石の日記を交えながら、彼が接したイギリス文化を解説していくというもので、思想としては自分の同人誌に近しいものを感じます。特にこの筆者の方に共感が持てるのは、「行間を読み、自分の意思で偏執的に調べ尽くす」ところです。

食事や紅茶の描写は圧巻で、漱石の話から遥か遠くに離れ、この一冊でイギリスの食事時間の歴史が、わかってしまうような内容です。これに早く出会っていれば同人誌『ヴィクトリア朝の暮らし4巻』の料理系メイドさんを解説した際に、主要参考文献の一冊にしたことでしょう。

料理に限らず、「漱石が古本を買っていた店」を突き止めたり、ディテールや自分の知りたいことを徹底的に調べるスタンスは、尊敬できますし、その分だけ、響きました。あと、同時代の日本人で詩や絵画でイギリスに受け入れられた人の紹介もあり、そうした点でも関心の幅を広げてくれます。

長谷川如是閑が旅人・ジャーナリストとしてイギリス文明と対峙する気概を持ったのとは違い、生活者の視点で推測と仮説、その根拠を探して構築される同書は、生活の匂いがする良書です。