トランジスタティーセット 〜電気街路図〜


『トランジスタティーセット 〜電気街路図〜』(里好、芳文社/まんがタイムKRコミックス フォワードシリーズ、2009年)
は、秋葉原の電気街を舞台に、電子部品店を祖父から受け継いだ高専生の半田すずと、その向かいに「メイド喫茶」を開店した幼馴染の木場みどり、そしてすずを慕う商店学会長の孫娘・須田さいりを中心に、秋葉原ブーム・萌えブームで変わりゆく街を背景に進行していきます。

本編は電子部品店が拠点となっている設定を活用し、メイドロボを作ろうとしたり、小学生に向けに電子工作教室を行ったり(メイド服を着たみどりも参加)、すずの技術の高さを見込んで同じ学校でロボット研究部(ロボコン参加)の生徒たちがスカウトに来たりと、エピソードは盛りだくさんです。

そもそも若いみどりがなぜ、メイド喫茶を開業できたのかは謎のままです。壊滅的にドジっ娘で喫茶の通常営業の描写もあまりない中で、なぜメイド喫茶を営んでいるかは中盤以降に明らかにされます。全体として、ふたりの主人公の少女たちが自分の道を探していく展開となっていて、みどりが始めたメイド喫茶も最後の方には広がりを見せていきます。

作品の視点としては、「秋葉原の電気街に住んでいる主人公たち」という設定はあまりないものです。「電気街」としての営みの中で描かれる日常生活は「秋葉原」を地に足がついた視点で、萌えブームやオタク化が進む街に訪れる人々を描写している点もユニークです。

なお、みどりが開店したメイド喫茶「アセンブラージュ」の名を冠する、Assemblageという電子工作を体験できるお店が、秋葉原に開店しています。記事fabなび ASSENBLAGE(東京 秋葉原)によれば、総武線高架下にあった「秋葉原ラジオストアー」内のものづくりスペースにあったお店で、今は場所を変えて営業をしています。Akiba Deep Travelでメイド服を着たガイドを務める槇野汐莉さんが関わっています。

元々、秋葉原には以前からはんだ付けを行うお店や、カフェもありました。私の記憶では、秋葉原のメイド店『橙幻郷』が、はんだ付けを行うイベントがありました。

 また体験スペースでは、はんだごてメーカー・白光株式会社とメイド喫茶・橙幻郷がコラボした「メイドさんと一緒にはんだづけ無料セミナー」が開催された。これは、「ものづくり」には、電子部品を組合わせて試作を繰り返すために「はんだづけ技術は必要不可欠」として、子供たちにはんだづけを教えることを目的とするもの。訪れた人は、白光株式会社の東京営業長の直接指導のもと、メイドと一緒にはんだごてを使ってマイコンオルゴールの製作に挑んだ。はんだづけを体験したメイドの1人、有村しおんさんはその魅力を「付ける瞬間の快感」にあると語った。

NWES ポスト セブン「メイドがはんだ付けに挑戦 秋葉原で新旧の店が集うイベント 2012.01.08 18:15 より引用

この点では、物語と現実とが少しずつ重なり合っているのが、秋葉原らしいです。