児童向けのメイド作品の絶対数は少ないものの、小説レーベルにもメイドがメインの作品が姿を見せます。「集英社みらい文庫」の『メイドの花ちゃん ご主人さま
はスーパーセレブ』(名取なずな、集英社、2011年)です。
伝説的メイドの娘で「姫乃木メイド学校」を最年少の11歳で卒業した優秀な田畑花は、校長の推薦を受けて、赤坂の地主・久賀家に勤めます。
メイドスキルが非常に高いものの、自分に都合のいい妄想をする癖が強い花は、仕えることになる久賀家の4兄弟のうち、特に花に厳しく接する三男・火か いと人から「しきたりを破る」、「妄想を口走る」、「プライベートを詮索する」という3点を理由に、雇わないと申し渡されます。それを覆すために与えられた課題をクリアした花は居場所を得て、4兄弟のために働きます。
その後、花はある家訓に背き、さらにその行為が火人の抱える心の傷をえぐったため、屋敷から追い出されます。校長は出戻りを咎めず、花にもう一度職場に戻りたいかどうかを尋ねます。
花は主人の役に立ちたいと、メイドの心意気を見せます。
真剣に主人を思う姿勢から主人たちの信用を得た花は、拒絶を続ける火人の痛みを癒そうと、その妄想力を相手の心を思いやる想像力にするのでした。全体に花の妄想がありつつ、仕事と向
き合い、職業的真面目さを追求したメイド作品になっています。