『花ちゃんとハンナさん』

『花ちゃんとハンナさん』(山名沢湖、講談社、2013年)は英国メイドとメイド喫茶をクロスオーバ
ーさせた作品です。就職した会社が倒産した女性・花は、再就職先を検討する中、地元の商店街にあったメイド喫茶で働くことを決めます。

「フリル」、「リボン」、「エプロン」、「ワンピース」と、メイド服の華やかな色彩に興味を持ったからです。

帰宅した花が自室でメイド服を着ながら、母から渡されたアンティークの手鏡を覗き込むと、英国メイドの幽霊・ハンナが姿を見せました。ハンナは長年鏡に閉じ込められていましたが、メイド姿の花を見て仲間だと思い、姿を見せたのです。

ハンナは花の職場にもついていき(ハンナの姿はメイド店員にしか見えない設定)、様々な英国メイドの仕事内容や当時の生活風景を、メイド喫茶の店員たる花たちの話題に重ねながら描写します。たとえば第3話では「歌」「恋」、第4話では「お茶会」「マナー」「準備」「お茶会で見た風景」、そして自身の当時の淡い気持ちにハンナは触れます。

メイド喫茶と英国メイドの仕事を同時進行で重ね合わせた作品を実現できたのも、『エマ』で時代考証を行った村上リコ氏が協力していたからです。同氏と漫画家・山名沢湖氏は高校時代の友人で縁がありました。

メイドの仕事描写を行う点で職業作品と言えますし、そのモデルとなる英国ヴィクトリア朝ジャンルも少女作品で影響力を持つジャンルとなります。