|
制作日記
2004/04/16(金)
『MANOR HOUSE』はこの日記を書いてから見ますが、一応、「字幕」つきなので、英語力に不安のある人にもお勧めできます。これを見たら、入手できる範囲の映像資料はほとんど不要だと思うぐらい、クオリティは高いです。
NHKで放送された19世紀の暮らしを再現するドキュメンタリーは、都市の中流階級でしたが、こちらは「カントリーハウス」です。キッチンもフランス・シェフがいて、本格的です。わざわざ氷を運び込んで、氷室も作っていました。
メイドさんは、大勢いるようです。1stハウスメイド:エマさん26歳(勝手に命名)、2ndハウスメイド23歳、それにキッチンメイドが30歳、これにアルバイトらしいスカラリーメイドや、雑用の子達が加わるみたいです。
ちょろっと総集編というのか、おまけ特典の映像を見ました。日々、ビデオカメラの前で何かしら話をするんですが、フットマンの青年とメイドが恋仲になっているようで、屋敷を車になぞらえての、「エドワード朝・あいのり」状態かもしれません。
これが執事かハウスキーパーに発覚したら、「失格」になるんでしょう。
リアルの恋人が途中参加したら大変なことになりそうですが、人生とプライバシーを切り売りする点では、かつての電波少年を思い出します。
屋敷には当然、主人階級がいます。彼らはリアル世界の実業家ファミリーです。一番年下の子供は見るからに生意気そうで(声も)、きっと使用人を奴隷のように扱う展開になるでしょう……
一言で言えば番組制作者、恐るべきです。幾らでこの仕事を引き受けたかは興味深いところではあります。
2004/04/12(月)
さて、数日前に「久々に最高の資料に出会った」と書きました。映像資料系では『Upstairs Downstairs』に比肩し、『Gosford Park』などにも見劣りしないものです。
その映像DVDが、手元に届きました。
単刀直入に言えば、これはかつてNHKで放送した『19世紀の暮らしを再現する番組』の、「屋敷版」です。イギリスの放送局がカントリーハウスを貸し切り、素人のキャストを集めて、その中でエドワード朝(ヴィクトリア朝の直後)の生活様式で、三ヶ月間、暮らしてもらうというものです。
当然、主人だけではなく、メイドさんもいます。(眼鏡・リアル『エマ』は言い過ぎ?)使用人も数多く、ヒエラルキーも、『Upstairs Downstairs』を踏襲しています。映像は屋敷内の暮らしを映し出すという、「ノンフィクション」です。
『Gosford Park』が2001年、その影響を受けて2002年と最近に作られたと思われます。今、欧米でも「カントリーハウス」「ヴィクトリアンな雰囲気」が、静かなブームとして盛り上がっているようです。
この映像との出会いは、ほんの偶然でした。「屋敷系の資料が欲しいなぁ」「あ、MANOR HOUSEだって」と、買ってみた本が、「この映像の再録本」だったのです。感度を様々に広げていると、自然といい本や資料にも出会いやすくなります。
ちなみに、こちらに公式サイトがあります。
http://www.pbs.org/manorhouse/
Amazon.co.jpでも買えます。
少しだけ(最初の20分)見た感想です。
まず、屋敷に使用人が集められるところから始まります。彼らの役割と、これまでの経歴(つまりは本職)が紹介され、『Rule』が上級使用人から下級使用人に伝達されます。中でも「メイド役の人に妊娠しているか」を聞くだけではなく、「ナプキンの使用とチェック」を義務付けているのは、ものすごいリアル路線です。
このエピソードは、英書『THE RISE AND FALL OF THE VICTORIAN SERVANT』でも紹介されています。(当同人誌ではまだ取り上げていませんし、書いていいのか微妙なラインなので判断に困っていました)。メイドの妊娠を防ぐ為に、女主人の中にはこうした「定期点検」をしていた、という事実があり、そこまで再現するのかと、正直、驚きました。
さらに「風呂は一週間に一回」「チェインバーポット(おまる)の使用」「その処理は最下級の使用人が行う」ところまで、徹底しています。正直なところ、キャスティングされた現代人にとっては、「その当時の価値観に染まりきるまで」、精神的苦痛に見舞われる仕打ちが、続きそうです。
食事の光景もドラマにあるような「少しの掛け合い」があるようなものではなく、「厳格な執事が取り仕切り、沈黙が支配する」雰囲気満点、見ていて胃が痛くなります。
これはメイドさんが好きな人や、屋敷ファン、ヴィクトリア朝関連に関心を持つ人すべてに見て欲しい、「リアル路線」のドキュメンタリーです。果たして見ているこちらが最後までのほほんと感想を書けるのか、自信が無いです。
2004/04/15(木)
イベント関連の話題ばかりで申し訳ないです。
とりあえず書類不備や郵便事故はなさそうで、夏コミの抽選待ちに漕ぎ着けられました。受かっていることを願いつつ、新刊を出せるように日々、進んでいきます。
コミティアの委託準備も始めました。帝國メイド倶楽部も初参加でコミケのような導線が見えないので、結局、「在庫が残ったらいやだなぁ」といつもの慎重策に戻り(前回のコミティアは本当に作戦ミスでした)、部数は絞っていきます。
とか言いながら、宅急便での搬入が出来なければ、最初からやり直しなのですが。
メイドさん関連資料で様々に本をあさっていた結果、すさまじい映像にたどり着きました。まだ手元に無いので詳しく書けませんし、期待倒れかもしれないので実際に見てから書きますが、これまでの感覚としては、久しぶりに「最高の資料」に出会える予感がしています。
それにしても、最近入手した「最近作られた」英書のキャプションには、たいてい『ゴスフォード・パーク』が例としてあげられています。日本人が想像した以上に、海外(アメリカ)で相当なインパクトを与えたようでもあります。『ゴスフォード・パーク』も、資料本が出ていれば欲しいですね。
駄目な散財モードに入っています。
2004/04/09(金)
来月は同人イベントのコミティアと帝國メイド倶楽部に参加します。オリジナル創作のコミティアは前回2月に参加したものの、やや毛色が違って、流れそのものが「手にとってもらえない」「コミックスで無いと難しい雰囲気」に感じ、気がつけばアムリッツァ並みの敗戦でした。
なので今回は「スペース参加よりも手にとってもらえる可能性が高そうな」委託での参加申し込みをしました。そして無事に当選しました。1〜3巻を30冊ずつ委託する予定です。新規読者層が増えればいいなと思っています。
イベントの熱気を浴びたいという意味ではオンリーイベントの帝國メイド倶楽部に初めて申し込みして、こちらも無事に当選しました。オンリーイベントの方が自分のような方向性には適しているとも思いますので、のんびり場の雰囲気を味わおうかと。
そちらではコミティアで無料配布して無くなる予定だった(泣)、短編を引き続き配ります。新刊は何か翻訳を出そうと思うものの、資料選定が難航していますので期待しないでください。
オンリーイベントでは既に買って下さっている方が多そうな気もしますが、『エマ ヴィクトリアンガイド』と試合ぐらいは出来る内容だと思っていますし、同人らしい「気概」にあふれる本だと自負しています。それらを新規の読者の方に感じていただけたら幸いです。
昨年よりも圧倒的に忙しく、資料を読みきれず、創作時間もほとんど確保できていませんが、夏に向けて残り4ヶ月を切りました。毎回毎回、乗り越えたその先には新しい壁しかないのですが、壁をまた越えられるよう頑張ります。
2004/04/06(火)
久々の更新です。
病気が始まった結果、資料が山積みとなりました。相変わらず「外れ」の本もありますが、最近はかなり精度が上がったような気がします。Amazonでは立ち読みできないので、随分とお金を浪費しましたが、この辺りの感覚は養われてきました。
最近思うのは、資料本を作る作業は「料理」に似ているなぁと。最高の素材・食材(参考となる資料本)を集めるところから既に制作作業は始まっていますし、それによって料理人(筆者)のセンスも問われます。
悪い野菜や魚や肉を使えば、どんな料理人でも「最高を目指す」料理は作れません。同じように、同人誌とはいえ、資料本を作る場合は、素材で良し悪しの三割以上は決まってくると思います。
それをお客さん(読者)に提供する段階でも、魅力的な材料をどのように生かしていくのか(どう書くのか?)、またどういう順番で料理を出していくのか、脂っこいものの後に口直しを入れるか? 強すぎる味の後に弱い味を出さない(情報の出し方・順番・全体設計)など、料理と重なる部分は多いのかなと思います。
その点で同人誌を作るのに重要なのは、「設計」です。変な話ですが、森薫さんのサイトで『エマ・ヴィクトリアンガイド』の目次というのか、扱う内容の一覧を見たとき、「面白いな」「売れる」と感じました。内容を読まなくても、どういう見方をしているのかで、本の内容がある程度、把握できたからです。
そんなこんなで素材は揃いつつあり、設計も一段落しました。冬の同人誌は、以下のような構成で考えています。
4巻『貴族と使用人(三)』
第五章 使用人の立場
(概論)
・労働条件と賃金
・使用人としての生活と楽しみ
・主人との絆
・実在と物語のメイドさんの恋愛と結婚
・妊娠
・ミニコラム:日々の料理
・ミニコラム:プディング
第六章 メイドさん(料理系)
(種類)
・キッチンメイド
・コック
・スカラリーメイド
・スティルルームメイド
・デイリーメイド
・メイドオブオールワーク
もう少し練り直しますが、この作業を進めるのに必要な資料や情報の整理を行う同人誌を、今年の夏コミで発行する予定です。そっちの設計と執筆は今週末ぐらいには終わらせて、作業を始めます。
2004/04/01(木)
一ヶ月以上かかると思っていたamazonの本が、徐々にそろってきています。パッケージをひとつにして送ってくれればいいものを散発的に送ってくるので困っていますが。
今回の購入物に17ドルぐらいで買ったDVDがあります。『Portrait of England』と題するこのDVDはイギリスの田園や屋敷などの風景を撮影した映像で、中には空撮したものもあります。
特定の屋敷を探訪する物が欲しかったのですが、空撮映像にはカントリーハウスの敷地の広さに驚かされました。頭では「見渡す限り、山の向こうまで領地」とわかっていますが、いざそれを飛行機からの映像にされると、びびります。
ずーっと長い並木道の真上を飛行機が高速で移動して、どこまでもどこまでもまっすぐ行くと、ようやく屋敷が姿を見せます。また、地面からの映像でも、「緩やかな並木の坂道・坂の上には輝く空しか見えない」(多分、坂の上に立つと屋敷が急に視界の前に広がるような印象を与える)といった工夫を見せられると、涙が出そうになります。
その上、短い時間ですが屋敷の中や庭を歩くシーンも多くあり、「ここにメイドさんが歩いていたのかなぁ」と、イメージをする際の手助けになりそうです。
あと3ヶ月、そろそろ原稿を書き始めます。
|