制作日記

2003/09/30(火)

9月も終わりです。かなりハイペースで日記を更新してきましたが、投稿小説用の執筆に気を取られ、冬コミ原稿進捗は予想よりも悪いです。なのでメモを復活させつつ、やる気を出します。

今日の御題は『紹介状』です。英語では"reference"として出てきますが、使用人の転職にはこの紹介状が必須でした。現代的に言えばスキルや人物を書いた履歴書+職務経歴書に近いですが、問題は、これを書くのが「雇用者」であった点です。

使用人は奴隷ではなく、自由に辞める権利を持ち、また職場を選べましたが、この紹介状の無い転職は、一般に受け入れられず、破滅・転落への第一歩と見なされました(使用人から使用人に転職する場合にで、それ以外のケースはわかりません)

新しく使用人を雇おうとする人は、この紹介状を見て、その内容について、それを書いた人に問い合わせることも出来ます。その内容は様々で、悪罵に似たやり取りは『台所の文化史』に紹介されています。要約すると「うちを辞めるような使用人にろくなのはいないわ!」、ですが、これは極端な例だと思います。

さて、この紹介状ですが、今日読んだ本では、「嘘を書く」2例をあげていました。まず「使用人を良く書いてあげる」場合、実際とは異なる内容を書いたということで多額の罰金(使用人の年収額ぐらい)が、書いた雇用者に課せられます。

優しさは、報われないのです。

その一方、逆のパターン、「実際はいい人なのに嘘を書いた場合」、損失を被るのは使用人ですが、ここでは単純に罰金とは行きません。使用人自らが、「その嘘を書いたという悪意の証明」をしなければならなかったようで、使用人にそんな証明が出来るはずありません。

雇用者は使用人の生殺与奪の権利を握っていたというのは比喩ではなく、当時刊行された家政の本でもその点について、たしなめる文章が多かったそうです。

他に使用人が紹介状を偽造、変造した場合も、1のケースと同様、罰金が課せられました。そこの表現では「二年分の年収」とありましたから、使用人は法的にほとんど守られていませんでした。

使用人が紹介状を受け取れないケースの多くは、「メイドの妊娠と、放逐」です。妊娠したメイドは屋敷から追い出され、実家でも冷遇されます。この場合は紹介状を受け取れないので、次の仕事へ就くのは困難になります。

しかし、本によると多少、抜け道があったようです。「親切な近所の人」が、彼女を雇い、そこで「そこから始まる紹介状」を書いてくれたというのです。

これ以外に、文章の中では"character"という言葉も出てきます。これは「人物証明書」というニュアンスに近いようです。どの程度の内容なのかはわかりませんが……
2003/09/28(日)

地道に翻訳を行い、細かい部分でのニュアンスの調整(うまく翻訳できない箇所)を除けば、全体での流れは出来ました。今回はただの短い翻訳で特に創作していないので、無料配布でいいかなと思います。B5で8ページになりますが、気が向けば、オフセットの冊子で作ります。

さて、『1984年』を読みましたが、前半部分は物凄い「ハヤカワ」でした。文字に太字があったり、SF的なルビが数多く振ってあり、今までに自分が読んだオーウェルとはまったく別の作家の作品のようで、描かれている風景もSFそのものでした。だからハヤカワが出版していたんですね。

内容は読んでもらうのがいちばんで、何を書いてもネタばらしになりますが、全体主義の怖さ、現実認識を支えるものの崩壊など、読んでいて怖くなるような、そして考えさせられる内容でした。寓話的な『動物農場』とは異なり、システムに疑問を持ち、やがて崩壊していく人間描写が、恐ろしいです。

前半は情景描写、後半は思想の戦い、といった感じですね。面白かったですが、久々に疲れる本でした……
2003/09/25(木)

好きな作家のひとりに、ジョージ・オーウェルがいます。同人誌の主人公、ジョアンの父親の姓はここから貰っています。

全体主義を描いた『動物農場』で有名な人ですが、この本以外ではジャック=ロンドンの『どん底のひとびと』に似た、『パリ=ロンドン零落記』があります。

もう随分前になるので内容は判然としませんが、オーウェルが貧乏な暮らしをしながらパリのホテルで働き、ロンドンに戻ってきて放浪旅を続けながら、救貧院を体験するといったような話です。

当時は特にイギリス社会の知識も無く、ホテルの厨房のとてつもなく熱い様子や不潔感が印象に残りました。読み直したらまた面白いと思います。

あとはビルマに赴任した話も読みましたし、戦争という感じのしない『カタロニア讃歌』はなかなか不思議な作品でした。それでもうひとつの大作、『1984年』を長い間捜していましたが、なんとハヤカワ文庫で出ていました。

たまたま『五輪の薔薇』という本を、『Sweet Maid Garden』の掲示板で知り、「読んでみようかな」とハヤカワを見ていたら、見つけました。『1984年』はまだ読んでいないですが…

『五輪の薔薇』は本格的に当時の価値観を再現し、ディケンズ的な内容の本です。全5巻でまだ1巻しか読んでいませんが、秘密を抱える主人公が自身の生まれに興味を持ち、そのことが世間から隠れなければならなかった母を傷つけ、そしてどんどん危機に追いやります。

父のいない家庭の母子が遺産相続に巻き込まれる、それも登場人物のえげつなさやいやらしさは読んでいて、リアルです。巻末のあとがきでは有名なケロウ・チェズニーの『ヴィクトリア朝の下層社会』に出てくるような、という評し方もされていましたが、そんな感じです。

メイドさんも出てきますが、遺産相続と複雑な財産分与、『平衡法』と『習慣法』などという法律の違いについても目を向けていて、人を騙す方法などは今日にも通じていますし、「お母さん、なんでそんなのに騙されるの!」など(志村…的なんでしょうか)とにかく引き寄せられます。

続きも読みたくなる展開でしたが、確かにディケンズ的です。また、あとがきにあるように「勧善懲悪の大団円」ではないとのことで、好みは別れるかもしれません。ディケンズの作品、どうも「リアルさ」が嫌なのか、好きなキャラクターがいません。

もっとも、ドストエフスキーの『虐げられた人々』に登場するイレーヌ(お気に入り)は、あとがきによるとディケンズの『炉辺のこおろぎ』という作品のキャラから着想を得たそうなんですが……この『炉辺のこおろぎ』も普通の文庫では出ていないので、未読の作品です。

また、このハヤカワ文庫の界隈をなんとなく見渡し、昔、友人から借りた本があったなぁと思っていたら、別の棚に『大列車強盗』を発見しました。ショーン・コネリーが主演したこの映画、前に文庫化されていると書きましたが、作者は何と『ジュラシック・パーク』や『ライジングサン』などのマイケル・クライトン、超・大物作家でした。

さて、翻訳は少し進みました。読んでわかったつもりになっていることなのに、一語一語を人に伝える為に丁寧に日本語に置き換えるのは大変ですね……
2003/09/24(水)

いつのまにか秋です。すぐ暑さが戻るのではないのかと警戒していますが、そうでもないんでしょうかね。秋になると当然のように冬コミが近づいてきますが、既に夏コミ終了から1ヶ月(まだなのか、もうなのか、微妙ですが)、新刊作業はなかなか微妙です。

とりあえず現時点でも作れますが、自分にとっての百点にはなりません。集めた資料の多さを考えると、読むだけで相当、時間を取られます。そして今、なかなか読む気になれません。集中していないと読んでいた内容も忘れるんですよね……

目的意識を持とうということで、エマ・シャーリーイベント『Sweet Maid Garden』用に、今読んでいる資料の一部翻訳でもコピーで配布しようかなとも思います。内容的には。今まで他のサークルの同人誌でも見たことが無いはずの資料に基づく(市販の和書でも、もちろんですが)「使用人の制服」についての資料になります。

まずは自分で読む為に翻訳して、気が向けば、コピー本として作ります。

2003/09/23(火)

久々にきちんと昨日は英書を読みました。最近読んでいる資料の中には珍しい描写があったのでご紹介します。それは、メイドさんたちがどこで寝ているか?です。

大きなお屋敷では使用人棟や数人で寝る部屋がありますし、市街にある4層ぐらいのマンション的な建物(1つの家族で使用)でも、屋根裏部屋などが割り当てられますが、狭い家では大変な目にあっていたそうです。

あるメイドさんは部屋が無く、仕方なく「お風呂(たぶん水を抜いた湯船の中?)」に敷物を敷いて寝ていたそうです。また、雑用で働いていた少年は使用人ホールの戸棚の中で寝ていたとか…

さらに、そういったケースでは私物を置く「私室」なんていうものがありませんから、キッチンや使用人ホールに、私物を置いておいたそうです。一日の仕事で疲れ、自分だけの時間も部屋も無い、という生活もあったんです。

新刊の「理想的なキッチン」の翻訳にも載せましたが、様々な貴重品を管理する金庫が執事の部屋には備わっていることもあります。映画『ゴスフォードパーク』で出た金庫ですね。若い男の使用人は、この金庫番として、その傍らで眠らされることもあります。

多くの使用人は地下(階段の下)で暮らし、大きなお屋敷などではない市街地の家では、日光に当たる機会も少なく、非常に不健康だったそうです。この為、彼らの顔色は青白かったと言われています。

普通のメイドにとって、一日のうち外出する機会は限られました。早朝に家の前の階段を掃除する以外、外出の必要が無いからです。食料品はすべて出入の商人が運んできます。主人に付き従う侍女や、子供の世話をするナースメイドは別格ですが、あとは一週間に一度だけの日曜日、教会への礼拝になります。

工場法で子供や女性の労働時間は制限されましたが、使用人はその庇護を受けられませんでした。1890年代から徐々に日曜日の休み以外に、月に1日の休暇、さらには週に1回の半休が与えられるようになっていきました。

とはいえ、屋敷の主人たちはメイドたちが個人的な付き合いをしたり、外出して遊ぶのを好んでおらず、半休とは言いながらも早い時間に門限を設けていたケースもありました。
2003/09/22(月)

昨日も『ファンタシースター』をしましたので、昨日の『ファンタシースター』日記は更新です。

今日の話題は、新宿にある『文化女子大学』で映画の衣装を扱う講演についてです。最近は映画の衣装にも目を向けているので行ってみたいですね。

画像から言うとオードリー・ヘプバーン主体になりそうですが、意外な企画として、『時代衣装を着る〜コルセット試着』なんていうのがあります。

希望者のみ、ということですが……『世界服飾史』に載っているコルセットで締めた女性のウェストなどを見ると、正直、寒気がするほど細くなっています。09/30に時間の取れる方は、行ってみては如何でしょうか?(平日ですが)

この文化女子大学の服飾博物館はいろいろな衣装があり、また服飾博物館の刊行物はカラー写真が多い割に千円ぐらいに収まっている良心的な本が揃っています。参考文献に書こうと思って忘れていましたが、明治や大正の日本の洋装についてや、あと珍しいところではブルガリアの民族衣装なんていうのもあります。

ちょうど今の時期は『名品でたどるヨーロピアンファッション』と題して、18世紀以降の洋服の展示もしているようです。暇な日に、足を運んでみようと思います

2003/09/20(土)

自分ではそうではないと思いながらも、「あれ?」と思い直す瞬間がありますが、今日はそんな自分に気づいた映画鑑賞でした。

映画『サハラに舞う羽』に行きました。パンフレットによると1900年ぐらいに執筆され、映画化も6度ぐらいされている大きな作品でした。

予想通り、上流階級というか社交界の舞台や、兵士が訓練をするカントリーハウスの広い庭先、そして壮大な建物の内観など、見るべきものは多かったです。

しかし主人公に魅力を感じず、ヒロインの自己中心的な具合は伝説のヒロイン、『ガンダム0083』のニナ・パープルトンに通じ、映画のストーリーやキャラクターはあまり好きになれませんでした。ヒロイン役もやや個性的過ぎ、好みではないです。

というか、スーダンで主人公を助けた奴隷階級の男に、依存しすぎです。主人公はこの男に迷惑をかけ、甘えすぎています。この男を主人公にした方がいいと思うぐらい、主人公の心理が見えにくく、わかりにくく、突発的で、成長がありません。

しかし、一瞬だけ、ほんの一瞬の光景に、涙が出そうでした。

失明して帰国した主人公の親友ジャック。彼の元にヒロインのエスネが尋ねてくる舞台設定がありましたが、そこでメイドさんが、この映画ではこの光景だけ登場し、部屋の中央を通り過ぎていきました。

後姿だけでしたが、その歩き方、スカートの流れるようなライン、そして後ろで結ばれた白いエプロン。正面図ではないにもかかわらず、意外なことに「あぁ、いいなぁ」と心に残りました。

今回の映画で見るべきところは、そのシーンです。

あとは予告編の『復活』(トルストイ)でしょうか? 背景に流れる『悲愴』(だと思います)にマッチして、涙が出そうでした。ロシアスキーとしては見に行かないといけません。

とりあえずあのカントリーハウスを突き止めたいです。イギリス大使館の観光サイトには映画でどの屋敷が使われたかの地図があるので、そのうち出ると思います。

舞台のほとんどは砂漠なのですが、当時の軍隊の在り方という部分は稀有な描写なので、いいかもしれません。宣伝の割りに上映館が限られるのも、仕方ないと思います。

→ファンタシースター日記
2003/09/19(金)

『ファンタシースター』は長いので、別に書きました

明日から『サハラに舞う羽』が公開されます。つい先日、読売新聞に監督のインタビューが出ていました。貴族や上流階級の生活が十分に描かれそうで、また大好きな雰囲気の騎兵も出てくるので、楽しみです。

西洋の人が砂漠に行く風景が好きで、アガサ=クリスティの小説や映像、『アラビアのロレンス』、『インディ=ジョーンズ』、『ハムナプトラ』(2はひどかったですが)などの作品に似ている雰囲気や温度があれば、最高ですね。

メイドさんが出るのかわかりませんが、貴族や上流の暮らしを再現する以上、出ないはずがありませんので、その面でのチェックもしてきます。初日に行っても混雑していなさそうですから、明日にでも足を運びます。

これ以外に、『リーグオブレジェンド』(ショーン・コネリー主演)といういろいろな物語のヒーローを集めるアクション物も、ヴィクトリア朝のようです。『フロムヘル』も元々はアメコミで、その原作者が作った作品みたいです。危険な香りが…
2003/09/18(木)

先日書いた『我が秘密の生涯』ですが、図書館で借りたのは別の本だと判明しました。今日、別の図書館に寄ったところ、ヴィクトリア朝の本があったので手にしましたが、それが昔借りた本でした。

その本の中で『我が秘密の生涯』を中心に、当時の性について評論しているだけで、元の本は読んでいませんでした。この本のタイトルは『もう一つのヴィクトリア時代〜性と享楽の英国裏面史』です。とりあえず読み直してみます。

さて、脈絡もなくゲームの話題です。

昔から週刊少年サンデーを買っていて、今週のサンデーの広告に『ファンタシースター』がリニューアルされて、PS2で発売されたと記事があり、早速買いました。話せば長くなりすぎるのですが、とりあえず少しこのゲームとの思い出を書きます。

小学生当時、兄がコンシュマー機を購入する決定権を持ちましたが、兄が選んだのはSEGA初代でした。

友人たちはファミコンを所有していたので、ものすごい日陰の時代です。SEGAを持っている友人に出会えたのは、わずか2名ほどでした…

初代との互換性がないSEGAMark3専用ソフトが出たときも、健気にマスターシステムを買い、そこで出会った思い出のゲームが、『ファンタシースター』です。

発売日に秋葉原まで買いに行き(当時小学生)、今はあるのか?『X-1』というお店(『源平討魔伝』のアーケードがありました)で必死に入荷を待っていましたが、一緒に行った兄より、「他のお店で売っているよ」と教えられ、すぐ足を向けました。

名前は覚えていないお店の店頭に張り出された紙には、こう書いてありました。

『ファンタジースター』

幼心にそれはないじゃん、とか思いながらも、どうしてファンタシーであって、ファンタジーじゃないいんだろうなんて考えもしましたが、無事に入手して、家で遊びました。

以下、続きます。

制作を優先しているのでゲームをする時間はほとんどないんですが、少しだけ、プレイします。というか、最近、家にあったマスターシステムを掘り出して初めからプレイしていたんですよね。石化したタイロンを見つけ、ミャウを探しているのですが…

ちなみにSEGAサターンも所有していますが、メガドライブとドリームキャストは持っていません。あと、高校の友人に貸したままの『ブラックオニキス』や『ファンタジーゾーン』、『星を探して』、そろそろ取り戻さないと…

『ロレッタの肖像』もリニューアルしてほしいこの頃です。

以上、SEGA談義でした。

2003/09/17(水)

続けての更新になります。船便で頼んだ本も続々と到着し、再び読みきれない本が増えたので、計画的な読書を始めました。手元にある幾つかの英書にはそれぞれ、日本の有名な本の元になったと思える箇所や文章構成があり、その面ではより詳しい内容の理解に繋がっています。

制作前のネタばらしをしたくないので書けないものも多いですが、ある英書で使用人の『性』を描いた箇所で、有名な『我が秘密の生涯』が出てきました。

すっかり忘れていましたが、この本、2000年ぐらいに本を書こうと資料を捜していたときに出会っています。図書館で『ヴィクトリア朝』と単純検索するとこの本が出てきて、蔵書だったので取り出してもらい、家で読みました。

ところがこれ、ヴィクトリア朝当時の筆者の性の遍歴を描いた内容でした。当時は「資料本じゃないじゃん」ぐらいに思いましたが、英書に書かれていたメイドさんの視点から見たこの本の分析によれば、筆者は『メイドさんにとって怖い』主人階級の典型です。(ただ、この筆者の言葉遣いには、馬に関わる用語や表現が多いらしく、本当は中流や上流の出身ではなく、馬丁などではなかったのかと指摘もあるようです)

筆者は少年の頃から家のメイドに目をつけています。最初のセックスの相手はメイドだったり、彼女がひとりで居るところを狙ったり、大人になって結婚してからもメイドを妊娠させた記述が載っているそうです。

あまり性の部分には踏み込まない本同人誌ですが(いろいろと暗い話が多いので書きたくないのが本音です)、4巻ぐらいで妊娠や解雇について扱います。

メイドさんの妊娠は即座の解雇に繋がりますが、この当時の衣服はだぼだぼなので、お腹が目立たず、人知れず出産していたという話もあります。

前に読んだ『侍女』(創作的な伝記)では当時の出産風景や、かわいそうなメイドのエピソード(家の主人に迫られ、十五歳で初めて出産し、三度目の出産が家の奥さんに発覚し、自分から辞める)もあったりします。

また、英書の方では、あるメイドが、身篭ったのを自覚すると流産しようと身体に差し障ること(重い家具を持ったり、マスタードの風呂に入ったり…)をしますが、結局、出産し、自身から解雇を申し出た話が出ています。

メイドさんを性的対象として見る視点を知りたい方は、『我が秘密の生涯』を読んでください。本や文章としては単調で面白くないですが……

また『侍女』には、結婚して子供を産んだメイドが再就職したとき、また子供を産んで職を失うのを怖れ、妊娠しないように幾つかの努力をする描写もあります。

他にも幾つかエピソードはありますが、この話題はこの辺で…
2003/09/16(火)

すっかり更新が止まってしまいました。例の『侍女』は読み終わり、今は『英国流立身出世と教育』(小池滋・岩波新書)を読んでいます。貴族の息子が通うというパブリックスクールについて、あまりよくわかっていないので読みました。

パブリックスクール、寄宿学校を舞台として使ってみたいものがありますが、次回ぐらいで奨学生を出す予定です。様々な意味で『偽善的』とも言われ、単語の『Victorian』にもそういった意味があるぐらいな時代、領地に居る優秀な学生を奨学生として学校に送り出すというシステムも、なかなかに微妙だったようです。

九月の半ばに入り、そろそろ具体的なストーリーも練らないといけませんが、読みたい英書が多い割に、進んでいません。読むのにはエネルギーが要りますし、あまり真剣に辞書を引いていると逐次翻訳になってしまい、時間がかかりすぎます。

まぁ、資料を読まないことには始まりませんし、インスピレーションや舞台背景が見えてこないので、地道に続けます。

今日、丸の内線に乗ったのですが、録音されているアナウンスをしているのは声優の横沢啓子さんでしょうか? サザエさんの『ワカメ』と、横沢さん演じる『ドラミ』は、いわゆる『お兄ちゃん萌え』キャラ……などと下らないことを考えました。

さらに今日、『炎の転校生』の文庫版を買いました。島本先生が大幅に加筆したのですが、加筆した絵と昔の絵のギャップ、それに加筆したところがやや説明的で、昔の『いい意味での勢いだけ』を殺してしまって残念でした。一時期までの刊行された島本作品(絶版含む)をすべて集めたほど大好きな作家のひとりですが、リニューアルは往々にして難しいですね。

去年か一昨年は高校時代に島本を貸した友人に誘われ、『逆境ナイン』の舞台を見に行きました。それを機会に読み直してみるとまだ『熱さ』、どうしようもないぐらいの『熱さ』が残っていました。

後輩から『逆境ナイン』の続きが出るとも聞いており、それを思うと、今回の加筆では、あの『めちゃくちゃに弾けていた勢い』を出し切れていませんし、最近は型が出来てしまったようにも思えます。

ファンとしては続編が嬉しい反面、不安もあります。そんな不安要素を裏切って、自分が今見ている島本作品への認識をさらにぶっ壊してくれるような作品になることを、願っています。

このサイトを見ている人のどれだけが島本作品を知っているかわかりませんが、コミケとも最近は縁が深いです。ここ数年にコミケを知ったらしく、水を得た魚のように、場としてのコミケに喜んでいるのが、刊行物から伝わります。

商業誌と同じクオリティの全力を注ぎ込んだ作品を出してくれる稀有な人ですね。去年の冬コミと今年の夏コミ、三日目の同じホールにいられただけで嬉しかったです。

2003/09/08(月)

個人的な話はさておき、また制作日記路線に戻ります。

船便で来ると思った一冊が、「速達です」と郵便局の人から届けられました。海外から受け取った本はすべて郵便局経由で来ていますが、速達で来たのは初めてです。少しびっくりしました。

今回届きつつある8月末の大量の資料購読(衝動買い)が、自分にとって、ひとつの区切りになります。今までは「普通に購読できる本」から選択していて、「やや関係あるかな?」とおっかなびっくり選んだものも含まれていましたが、今度の本は「日本では手に入らない絶版」を中心に古本で集めた甲斐もあり、欲しい資料・情報にヒットして、充実しています。

日本ではヴィクトリア朝や社会史の一環として使用人が扱われますが、使用人分野について、日本人研究者の多くは海外の資料に依存し、実地に調査している人はほとんどいないと思います。しかし本場の英国では使用人だけで1冊本が出来るぐらいに関心も高く、また学問の分野としても高いレベルにあります。

自国の歴史を、特に研究者にとっては、祖母や祖父の時代を理解するのは大切なことですから、英国の研究が日本より劣っていたら、問題があります。彼らの本の多くには、使用人として働いていた人への聞き取り調査やインタビューが紹介されています。

そんなこんなで海外の資料に手を出すわけですが、別に英語が得意というものでもありません。ただ知りたい、という気持ちだけが頼りですし、それをきっかけに強くなれたらいいなと思っています。

さて、今回の資料購読で得た本は2種類になります。ヴィクトリア朝の使用人の日常生活や使用人に限った資料本は、冬の新刊となる3巻と来年夏に前倒しで作れそうな4巻で使います。今まで手元にあった本では足りない要素が補われていますので、日本の本には出ていない知識やエピソードを紹介します。

予想外なことにメイドさんの制服関係情報は意外に集まり、内容的にも『制服学部メイドさん学科』さんの同人誌で書かれている詳細な考察とは違ったアプローチが出来そうです。

そして別系統の本になる、カントリーハウスで暮らす上流階級の女性、及びカントリーハウスで開催されるパーティの資料は、書きたかった「貴族の暮らし」「優雅な社交界」を知る意味で非常に重要な資料になります。

あとは、『Upstairs Downstairs』のDVDをどうするかぐらいでしょうか?

以下、余談です。

昨日、久々にNHKスペシャルを見ました。9.11テロの話ですが、その中でアフリカ系アメリカ人が「歴史の教科書で我々は奴隷扱いされていて、それ以外ではほとんど登場しないので歴史の授業が嫌いな人は多い」という内容の話をしました。

高校生ぐらいのときにそれと似たようなことを思いました。日本の歴史に限らず、ほとんどの歴史の登場人物、発明や本を書く人は男でした。自分は男なのでさして意識もしませんでしたが、女性から見たら、歴史はまた違うものかもしれないと。

ヴィクトリア朝の使用人史はその点で女性が主役になっています。何度か名前を挙げているPamela Sambrook氏も洗濯を女性の労働の特殊技能を必要とする分野として研究しています。

さらにカントリーハウスの権威であるマーク・ジルアード氏がランドリーメイドについて述べている有名な内容を、「(誤解という)罠に落ちている」と述べていますのも(その根拠はまだ文中で見つけていませんが)、抜け落とされた女性の視点での認識を大切にしたい気持ちからだと思います。

また『路地裏の大英帝国』の使用人の章を書いている大学の先生も名前をGoogleで検索すると、専門は女性史関連のようでした。

自分は特にそこまで考えず、ただどんな条件で働き、どんな暮らしをしていたのかに興味があるだけですが、どういう立場で書いているのかによって事実の認識や取捨選択が異なってくるので、筆者を知ることは大切です。自分が今、最も信用しているのはPamela Horn氏です。

おまけですが、NHKのその番組にWTCの反対側のビルに住んでいたカップルが出てきました。そのうち男性は俳優で、アニメの吹き替えをしていました。そのアニメが、『TMNT』(亀忍者)でした。まだ放送しているんですね。

さらに余談(というかこれは本筋)ですが、『ターミネーター3』を見に行ったときの予告編で、ヴィクトリア朝映画の予告がありました。『サハラに舞う羽根』という映画で、もうすぐ公開です。19世紀末のイギリス、エジプト、スーダンを舞台にしていると公式サイトに書いてありました。

長いついでになりますが、『日の名残り』の作者カズオ・イシグロ(インタビューと略歴)の本に『わたしたちが孤児だった頃』という小説があります。現代モノだと思って手を出していませんでしたが、1900年を舞台にした探偵モノらしく、ハヤカワで出版されています。今度、読んでみようと思います。

2003/09/06(土)

昨日・今日と、大学の後輩が東京に出てきたので、サークルの仲間とカラオケ+飲み会で迎えました。さすがに社会人としての時間が長くなっていますので、仕事の話を聞いていても、結構、楽しいですね。

学生時代に出会ってから、既に十年目の付き合いなんだなと思うとなかなか不思議な気分です。既に在学中より、長い時間を卒業後に過ごしているわけですから。本当に、貴重で楽しい時間でした。

久々に大学の仲間とカラオケでした。この半年、一般歌のサークルと、アニソンのサークルに顔を出していたりしましたが、今日は特に縛りも無いので、適当に歌い、昨日と今日でマイナーなアニソンと、マイナーな洋楽を中心にして、すっきりしました。

後輩がEVAの歌を歌ったとき、背景の映像が劇場版のもので、ミサトさんがシンジを送り出して、倒れるところまでを見ましたが、切ない感情を思い出しました。

ちょっと前に別の後輩から『イリヤの空 UFOの夏』というメディアワークスの文庫4冊を借りました。比較的読みやすく、ライトノベルらしい展開で、文章もキャラも面白く、昨日の深夜で1冊、今日の午前で3冊読み通しました。人に勧められるこういういい本を読むと自分の創作意欲も湧きますが、作品の面白さとは別に、ふと思ったことが幾つか。

設定が『最終兵器彼女』に似ていたこと、それにカラオケのEVAの映像が重なり、作者がかなり意識してEVA的な展開や構成をしていた印象を受けました。別にそれがどうこういうわけではないのですが、もしもそうならば、好きな作品の温度をオリジナルで昇華できたことが素晴らしいなと思いました。

それに筆者のストーリー運びだけではなく、文章がいろいろなところで面白いのがよかったです。男子校テイスト、なんでしょうかね? 真剣な馬鹿馬鹿しさは大好きです。

メディアワークスの文庫はいつのまにか増えていて、知らない作家ばかりですが、どの作家もシリーズで長く書いており、それだけ力をいれて出版社が育てている印象を受けました。

さて、カラオケの後、友人に、「持ち歌が1000曲あるんじゃないの?」と言われました。そこまでは無いだろうと思いつつ、そういえばどれぐらい歌えるのか、調査することにしました。今までに調査しようと思ったことが無いので、概算では500曲ぐらいと思いますが、適当に調べます。

とりあえず、『イリヤの空 UFOの夏』に刺激を受け、オリジナルを頑張って書きます。
2003/09/04(木)

いろいろと読み直しが入りますが、『シャーロック・ホームズ家の料理読本』のあとがきに、幾つか気になる記述がありました。

まず「オランダ布」(Holland)ですが、これが巻末の用語集に出ていました。それによると「遮光性の素材として、カーテンに用いられた」そうです。家具にかける場合には、この部分が重要だったのかもしれません。

次に驚いたのが、何度か記述していた『ミセス・ビートン』、この本によると24歳で『家政読本』を書き上げ、29歳の若さで亡くなったそうです。あんな分厚く、教訓的な内容の本を書いたのだから、かなり年齢が上の人を想像していましたが、意外や意外でした。

逆に「若く」見てしまったのが、少し前に読み始めた『侍女〜エリザベス・ブラウニングに仕えた女性』です。

この本に出てくる侍女が仕える詩人のエリザベスは、着替えるだけで疲れる、暖炉をつけっぱなしで部屋に篭もる、外出したがらない、階段を降りて他の部屋で過ごすと次の日にダウン、凄まじく「病弱」です。

年齢の描写が途中まで無く、結構子供じみた会話の内容と手間のかかり具合から、若い人を想像していました。しかし、これが衝撃的なことに、予想年齢の2倍近い、40歳にもうすぐなるという言葉が、途中で出てきたのです。

巻末の年表による生年と、章のタイトル『1844-46年』を比較すれば一発でわかるのですが、「病弱で名前がエリザベス=若草物語」の連想が無意識であったのでしょうか? ネット上で知り合い、顔も知らない人を想像するのも、こんな感じなんでしょうかね?

「あぁ、人(自分)は見たいものを見てしまうんだな」という、塩野七生さんが強調するカエサルの言葉を思い出しました。

2003/09/02(火)

このところ、自分の中での謎リストに、「オランダ布」(Holland)があります。『英国ヴィクトリア朝のキッチン』の文中、メイドは「オランダエプロン」をしているとありました。

少し前に読んだ『a Day in the Life of a Victorian Domestic Servant』でも、メイドは朝起きたとき、白いエプロンの上に、汚れてもいいようにオランダ布のエプロンをしていました。

このオランダ布がどのような素材なのか、『The Country House Servant』では衣類の保管に用い、防虫効果があるような書き方でした。

Googleで検索すると、アダルトっぽい内容のサイトにつながります……英語のHollandとClothで検索しても、Hollandという名の布地屋さんが最初に来て、弱りました。

さらに広辞苑でも調べましたが載っておらず、困り果てましたが、今日になってようやく、「あぁ、そういえば」と、『19世紀のロンドンはどんな匂いがしたか?』の巻末辞典を思い出しました。

そしてこの本は、期待に応えてくれました。

『リンネル製の布の一種。なかでも重い部類に属するブラウン・ホランド(brown holland)は、しばらく家を留守にするとき家具にかけておくための布として好んで使われた。また床用の敷物として使われることもあった』
『19世紀のロンドンはどんな匂いがしたか?』(ダニエル=ブール:著、片岡信:翻訳、青土社)P.448より引用

丈夫な布地であることは確かなようで、ある意味、イメージとしての西洋鍛冶屋(Dwarf指定)が丈夫な皮のエプロン(前掛け)をしている感じでしょうか?

辞典による使途を考慮すると、「(敷物に出来るほど)丈夫で、(家具カバーに使うほど)汚れがつきにくい」のが、このエプロンの特徴のようです。石炭の汚れと戦うハウスメイドには、欠かせない一品になるのでしょう。

今のところ、実物を見たことが無いので何ともいえませんが、絶対にこんなエプロンをコスプレでしている人はいませんね……というか、オランダ布を入手できたら、ぜひ見せてください。

あの当時の前掛けエプロン、今までに二十枚近く資料の中で写真を見ましたが、どれも優雅ではありません。忠実であることも大切ですが、現代的なアレンジの入った、見た目が綺麗なエプロンの方が好みではあります。

なんだかいつもとは微妙に違う話でした。
2003/09/01(月)

11月09日のエマ・シャーリー&メイド同人誌即売会『Sweet Maid Garden』への参加が正式決定しました。コミケ以外の同人誌イベントは初出撃です。予告通り、既刊の再版を行う予定ですので、夏に買い損ねた方で都合がつく方は、ぜひおいで下さい。

ただ、夏の新刊の増刷はどうしようか思案中です。来年にはコミティアも参加してみようかと思いますし、全体の完結まで数年単位必要なので増刷してもいいのですが、保管や費用、湿度など問題があるのが悩みどころです。

初回なのでイベント規模もわかりませんが、最大50スペースということで、何冊ぐらい持っていけばいいのでしょうか? 今回も友人の助けが得られそうなので、それなりに持っていくつもりです。

新刊は冬コミに向けたものなので、今回のイベント参加ではありません。前日の11/08がちょうどコミケの当落通知の発送です。「ネットでその日にわかり、かつ当選」していたら、冬の予告ペーパーでも作ります。

さて、また少しずつ『The Country House Servant』を読み直していますが、昨日の本に比べると、辞書を引く回数が尋常ではありません。おかげで当時の洗濯には詳しくなっていますが……専門用語、多すぎです。

ぱっと読んで概要を理解したいだけなのに、単語が難しすぎてそれが出来ず、時間のかかる逐次翻訳になって、あまりいいペースではありません。

そして今日、再び英書が届きました。基本的に気に入っている本を何度も読み、気に入らない本は目をぱっと通すだけで無駄が多いですが、今回は『Servant』と『カントリーハウスでのパーティ』に絞った資料なので、面白そうです。

今回の不安要素は「ナースメイド」です。困ったときのミセス・ビートン頼みもありますが、10月ぐらいに日本語での本を、図書館で探して見ようと思います。

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