制作日記


2003/06/19(木)

翻訳もようやく完了しました。日本語で言う古文なのか(原文は100年以上前)、簡単な単語の並びなのに読めない箇所が多々あり、簡単だと思って辞書を引かなかった言葉同士が結びついて別の意味を持っていたりと、難渋しました。

雰囲気優先ということでかなり大雑把に訳しましたが、コンテンツは完了し、あとは校正して、蓮深さんのイラストを待つのみです。気が付けば52ページに増加しましたが、値段は前回と同様300円のままになります。

これでようやく、落ち着けそうです。

といいたいところですが、既刊の再発行の作業も始まります…


2003/06/15(日)

翻訳も一段落して、残すところわずかになりました。案の定36ページには収まらず、前回の2巻に近い44ページとなりました。200円の値段を決めたときは28ページ予定でしたが、16ページ増えたので、冬に出した2巻と同じ、300円にします。構成はトップの紹介をご覧下さい。

そして、今回のメインとなる翻訳で出てくる使用人の職場となる部屋は、羅列すると以下のようになります。

01.KITCHEN(キッチン)
02.SCULLERY ROOM(洗い場)
03.THE PANTRY OR DRY LARDER(保存室)
04.MEAT OR WET LARDER(肉類保存室)
05.GAME LARDER(猟の獲物の保存室)
06.FISH LARDER(魚の保存室)
07.SALTING ROOM(塩振り場)
08.BACON LARDER(ベーコン置き場)
09.SMOKING HOUSE(燻製室)
10.THE DAIRY(酪農室)
11.THE DAIRY SCULLURY(酪農室)
12.THE PASTRY(パン保存室)
13.THE BAKEHOUSE(パン焼き小屋)
14.THE BREWHOUSE(醸造室)
15.THE BEERCELLAR(ビール倉)
16.THE WINE CELLAR(ワイン倉)
17.THE PACKING OR OUTER WINE CELLAR(ワイン作業場?)
18.THE BUTLER'S CELLAR(執事の倉)
19.THE COAL CELLAR(石炭庫)
20.THE WOOD HOUSE(薪置き場)
21.ASH-BIN ETC.(ゴミ置き場)
22.THE STEWARD'S OFFICE(スチュワードのオフィス)
23.THE STEWARD'S ROOM OR SECOND TABLE ROOM(スチュワードの部屋)
24.THE BUTLER'S PANTRY(執事の保管庫)
25.PLATE SCULLERY(銀食器洗い場)
26.PLATE SAFE()
27.SERVING OR SIDEBOARD ROOM(給仕室)
28.HOUSEKEEPER'S ROOM(ハウスキーパーズルーム)
29.HOUSEKEEPER'S STORE ROOM(ハウスキーパーの保管室)
30.THE STILLROOM(蒸留室)
31.CHINA CLOSET(中国陶器管理庫)
32.CHINA SCULLERY(中国陶器洗い場)


これにフローチャートと、3つのお屋敷の地図を挿入します。家族が暮らしているお屋敷の部屋よりも明らかに種類が多く、正直、びっくりしました。この資料を入手でき、そして紹介できて良かったと思えます。


2003/06/11(水)

翻訳を中心に、資料の整理を始めました。今回は「使用人たちの働いているスペース」(DownStairs)にどのような部屋があり、どのように配置されて、そこには何が置いてあったのかをお伝えします。

1巻2巻と写真を見ての解説や噛み砕いての文章が多く、直訳はあまりしてこなかったのですが、『The Country House Kitchen』の第一章"IDEAL KITCHEN"は、分量的にも少なく、内容的にもそのまま出した方がいいとの判断から、翻訳出来そうです。専門用語、独特な言い回しが難しく、かなり意訳していますが。

『The Country House Kitchen』は前に日記の中で嫌になるぐらい何度も触れた、Laundryマニアとも言うべきSAMBROOK女史と、もうひとりの共著です。類は友を呼ぶのか、このもうひとりも、かなり「突き抜けて」います。

"IDEAL KITCHEN"は「理想的キッチン」のタイトルからわかるように、使用人ブロックの中心的職場のキッチンと、そこから広がる階下の部屋すべての解説で構成されます。

家政系の仕事は「主人たちの住居」の清掃・メンテナンス・サービスで、職場は「階上」です。この「階上」については既に1巻「貴族とその屋敷」で若干解説しましたし、観光や映像、写真も多いです。一般にカントリーハウスを舞台にした創作では、表舞台が中心になります。

2巻以降は使用人が主役なので、「使用人だけが働く階下の世界」の解説が必要なのではないかと、考えていましたが、その面での資料は非常に少なく、かろうじて映画の『ゴスフォードパーク』でようやく光を浴びた感じでしょうか。(英国に"UpStairs DownStairs"という使用人を主人公にしたドラマがあるそうで、今度、入手の予定です)

日本語で出版される市販の本では、この面で充実した資料を見たことがありません。なので、この視点での階下の世界の紹介は「本邦初」ぐらいの気持ちです。次巻以降の参考にしていただければと思います。

"IDEAL KITCHEN"は1864年の王立大学の建築家の資料を原典にしていますので、著者の名前はあるものの、ほとんどが「紹介」に過ぎないようですが、章の最後には、整理された驚くべき、「DownStairs」の人の流れ、物の流れのチャートが作られています。

第二章からは実在の屋敷の階下の地図と、そこにある台所を中心にした部屋、どのように物資が流れるか、ひたすらにフローチャートで検証されています。今で言うところの「家事動線」の徹底的検証で、これほど屋敷の地図(使用人エリアですが)を集めた本は無いように思われます。

マイナーへのこだわりの深さが(自分のことはさておき)、『The Country House Servant』のSAMBROOK女史に通じるものがあります。第二章以降はあまりにもマニアックすぎるので、関心のある人は原典を購読してください。

あとは前述の通り、「コラム+イラスト」「小説」になります。36ページ以内で収まるのか微妙ですが、単純に資料本としての価値はあると思いますので、手にとって、一読していただければ幸いです。


2003/06/10(火)

作る作らないで散々に迷いました。

その過程は、日記を読めば明らかですが…

時間的制約や労力を考えて新刊を諦めましたが、昨日、冬に向けて資料を整理していると、「次の巻に載せたいけど、入らない」内容が結構ありました。これを今、本にしておかないと、後で困る、そんなふうに思います。

それに同人誌を長い間作っている蓮深さんと絵の関連で、電話で話をしましたが、「新刊を期待している人」がいると言ってくれました。なので、新刊は紆余曲折の末、作ります。

もちろん、新刊を期待してくれる人の為に作る、という気持ちだけではありません。同人誌ですから「まず自分が作りたいもの」が先にあります。その「作りたいもの」が、ようやく今になって、爆発しました。

事情も変わり、制作時間も取れそうです。
ネタも意欲も出来ましたので、新刊を刊行します。

こんなふうに「やばい、つくらなきゃ!」という気持ちにならないと、コミケに参加したような気になれない、というのもあるんでしょうね。この逆境を乗り越え、さくっと新刊を作ります。


2003/06/08(日)

昨日は友人たちと作るコミケの本(ヴィクトリア+久我がメインではないTRPGの本)について、喫茶店3件+飲み屋1件で8時間延々と話す、という一日でした。

金曜日と土曜日は朝五時半ぐらいに起きて朝の散歩をしつつ、十メートルぐらいを全力疾走する×5本、なんていうことをしており、身体も疲労。さらに土曜日はWEB系の学校に通い始め、10:00〜14:30まで受講で心も疲労。

その後の会議なので、もう終盤は枯れていました…

とはいえ、最後の1時間辺りでいつもの会議らしい爆発力が出て、創作意欲は出ました。

そして、結論として、この前は作るといった、出来上がりつつある新刊『Victorian Life Style』は見送ります。準備号として作っていましたが、構成が『コラム+小説+参考資料解説』になり、同人誌の第一目的の『生の資料』(作るのが一番大変)の部分が非常に弱くなっていました。

自分の書きたい物と書けた物とが、微妙に違います。これから資料面を強化するのも考えましたが、それぐらいならば冬に出す本を今からちゃんと作った方がすっきりします。今回は内容を削り、ペーパーかコピー本での無料配布にして、次回予告に力を入れます。

今後、夏は力を抜き、冬に『ヴィクトリア朝の暮らし』の新刊を出していきます。いつまで続くか、いつまで受かるかわからないのですが、完結まで作っていきます。

3巻『貴族と使用人(二)』(家政系メイドさん)
4巻『貴族と使用人(三)』(料理系メイドさん)
5巻『貴族と使用人(四)』(男性使用人+アウトドアスタッフ)
6巻『貴族の生活』(社交界・首都での暮らし)

5巻で主人公ジョアンの幼年期と屋敷での暮らしが終了し、6巻で少年〜青年期を扱い、従姉のシャハと社交界に出て行く話にします。気が向けばその後に農村や都市での貴族以外の階層にも目を向けますが、その辺は本が日本語で多く出ているので、特に作る必要は無いかなとも思います。

今回は新刊は無しで、既刊の復刻を行います。冬に来て下さったのに買えなかった方に、また来ていただければ幸いです。内容の編集は誤字脱字の除去、読みにくい言い回しの修正、事実誤認の訂正となり、今までに出した本の内容・構成は変えません。

ただ2巻は印刷所を変える都合で、紙質や表紙の色が変わるかもしれません。

だいたいこんな状態です。


2003/06/04(水)

申込みジャンルを変えてから2度目の申込みですが、今年の夏も前回2002冬に続いて当選しました!

ここ二年間で作っているメインの『ヴィクトリア朝の暮らし』3巻は、制作周期が1年単位ということで、夏に間に合いそうもありません。そこで、冬に向けての整理の意味をこめて、薄い冊子の新刊本を作ることにしました。

サイズは同じB5ですが、構成は左綴・横書きにした、『Victorian Life Style』です。

ネットに載せているコラム(物語とメイドさん)を整理し、そこに出ている小説の各人に蓮深さんのイラストを描いてもらう企画と、短編小説、それに資料集の要素(主に映画?)も加味します。だいたい28ページ程度を予定しており、既刊の再発行もします。

今回は冬に向けた準備ということで、ややシンプルな内容です。レイアウトやデザインなど本編の充実に向けて、試すつもりです。値段は高くても200円です。既刊1巻500円、2巻300円、今回ので200円と、お買い得計画です。

気合が入れば、冬の『ヴィクトリア朝の暮らし』第3巻を出せるのですが、中途半端な作業進捗で、3割程度の出来です。いつもイラストをお願いする蓮深さんも自身のサークルで当選した都合などもあり(おめでとうございます)、可能性はゼロです。

新刊はイラストを除き、8割程度完成しており、6月半ばに自分の作業は終わりますが、今回の内容で果たしていいのか、友人のレビューを受けてから、内容の再構築をします。

3巻に気持ちは向いているので、予告編やどういった内容にするかは、次回予告として載せるつもりです。

ところで、配置図を見たのですが、お誕生日席というやつでしょうか? 激戦区は避けているようですが、最終日は隣の列が消えてしまうので、ちょっと寂しい感じです。


2003/05/14(水)

このところ以前の比ではなく、毎日が忙しいです。連休中に入社以来初めて、休日出勤をするぐらいのせわしなさですが、とりあえず今週末に友人と制作会議をして(何を作ろうかと話しているときは楽しいですね)、その雰囲気次第です。

夏は既刊の再版メインで、おまけに短い資料本をつけるつもりです。コミックス『エマ』の考察(背景に出てきた「ミューディーズ」「水晶宮」など描写の軽い考察ですね)や、サイト内で書いたメイドさんレビュー、それに次回予告や購読した資料本解説など、雑多な内容で、冬用の資料整理も兼ねようかと。

最近、いろいろな情報チェックをしていなかったせいか、最高の使用人映画である『ゴスフォード・パーク』のDVD発売に気づいていませんでした。

たまたま「ロビン=ウィリアムズの『グッドモーニング・ベトナム』が欲しいなぁ」とDVDを物色していたところ、広告を発見しました。あいにく、その店では売り切れており、また入荷の予定も無い(再販可能性が低いそうです)というので、いろいろと店を捜し、最終的に入手できました。

英語の勉強がてら字幕を英語にして見ました。映画館で見たときは日本語字幕に向けられていた意識をあらため、なるべく用語や用法を聞き取ろうと思ったからです。しかし、出演者がめいめいに話すシーンが多く、字幕では中途半端に拾っていて、わかりにくかったです。ただ、そうした多重性は制作者の意図だったようです。

あらためて感心するのは、オープニングの「水筒の蓋も開けられない貴族」「主人の会話中、ずっと雨に濡れて待たされるメイド」、そして圧巻はカントリーハウスの使用人専用入り口からのシーンです。こういう角度から捉えた映画は無いと思えるだけに、非常に貴重なものです。前回の同人誌はこの映画からのエネルギーで作っていました。

メイキング映像もあり、そこで明らかになっていましたが、制作者は「ひとりでは演技させない」点に重きを置いていたそうです。ニュアンスは違うかもしれませんが、『階下』(down stairs)の映像は当然のこと、主人たちの『階上』(up stairs)でも、ほとんどの場面に使用人が映っていました。

それを「役者をひとりで演技させない」と表現していましたが、使用人が空気のように周囲に存在した点で興味深く、『階上』へ溶け込んでいた様子が参考になりました。

それ以外では『シャーロック・ホームズ』を視聴し終えたぐらいでしょうか……『ホームズ』というと、映画も最近放映されていました。ヴィクトリア朝の参考にと見ましたが、かなり奇天烈な話でした。

『シャーロック・ホームズの素敵な冒険』とか、そんなタイトルだったと思いますが、麻薬中毒のホームズが、フロイトの元へ中毒克服に乗り出し、その旅先で知り合った女性の誘拐事件を解決する、という話ですが、主人公はどう見ても、フロイトです。

このフロイト、ホームズ顔負けの活躍をします。貴族を相手に決闘をしたり(テニスですが)、最後にヒロインを取り戻すのもフロイト、スタッフロールのキャストの最初もフロイト、「フロイトってカッコいい!」という映画です。

ホームズが麻薬に手を出したのは幼少期のトラウマであり、そのトラウマを心理学者のフロイトが解き明かす、という筋立てはオマケみたいなものでした。TRPGのシナリオより手を抜いたような映画の脚本がなんとも言えませんでした。

今回、同人誌制作にあたって、自分で物や背景などのイラストが描けたらなぁと思うことしきりです。レイアウト能力も低いので、そういった意味で、テキスト主体からの脱却も図りたいこの頃です。


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