[映画/ドラマ/映像]THE 1900 HOUSE(02:出演する家族を募集:1話目)

1900 House

著者/訳者:Mark McCrum Matthew Sturgis

出版社:Channel 4 Books( 1999-09-10 )

ハードカバー ( 192 ページ )



※こちらは『THE 1900 HOUSE』の資料本です。


はじめに

NHK教育で過去に放送された、英国制作のテレビ番組『THE 1900 HOUSE』。19世紀ヴィクトリア朝の中流階級の家庭を再現し、そこで一般応募の家族が3ヶ月間、過ごすという番組です。これからDVDの感想を書き連ねて行きます。

まず、NHKで放送した内容と、現在アメリカのPBSから販売されているDVD(及びビデオ)は内容が異なります。NHK放送時は私の記憶が正しければ全3回でしたが、実際は全4回です。この省かれた第1回目は、「祭りの前の準備」から成り立っています。

「苛酷な環境に耐えられる家族を募集」
「家族が実際に暮らす家を再現する」

これが、今回ご紹介する1回目の内容です。

家族を選ぶ

ドキュメンタリーの企画に家族はビデオレターを投稿し、出場をアピールする。その映像がいくつか紹介されます。撮影する3ヶ月の間、テレビやラジオ、コンピュータ、それにファストフードから掃除機、洗濯機に至るなどを放棄しなければならない状況に対して、各家族が前向きなアピールをします。

過去の暮らしへの憧れ、未知の体験をしたい、そうした動機から応募する家族が多いのですが、番組スタッフは冷静に、どの家族を選ぶのが最適なのかを検討します。番組には精神科医も加わり、送られてきたビデオから家族を選考します。番組制作側は3ヶ月間の閉鎖環境と、暮らしの質や食事が変化することから、精神的な負荷が高いと判断して、「撮影カメラがあっても気にしない・順応する」「家族同士のコミュニケーションが取れている・笑顔が絶えない」家庭を選考しました。

当初、私は「文学作品の舞台となる、華やかな1900年のイギリスか」と気楽に考えていましたが、この番組は正確さを追求し、妥協しません。キャンプ生活に慣れていたり、様々な生活環境の差がある国々を巡る人々ならば順応するかもしれませんが、相当、大変な環境です。

選ばれた家族Bowler家の父は海軍軍人、お母さんと女の子3人、男の子ひとりの大家族です。番組スタッフも鬼ではないので、わざわざ当時の使用人たちが実際にどんな仕事をしていたのかを体験できる場所に連れて行き、当時の家事を経験させます。

メイドさんが登場・本物のお屋敷で当時の家事体験

家事を体験する場所は番組内では「Living Museum」「Central England」としか言及されておらず、興味があったので調べました。公式サイトを見たものの見当たらず、その後、一時間ぐらいしてようやく見つけたのは、公式サイト内。それもまったく別の名前でした。

正式名称は『Shugborough』、STAFFORDにあるNationalTrust所有のカントリーハウスでした。『THE COUNTRY HOUSE SERVANT』の著者であるPamera Sambrook女史もここでキュレーターをしていたと思いますし、『エマ』のアニメ第二期ではメルダース家の屋敷概観のモデルとなっていました。私の同人誌でも何度か名前を出している、個人的に思い入れができた屋敷です。

ここでBowler家を出迎えたのが、ピンク色のメイド服(午前服・作業用の服)を着た女性でした。彼女はこよりに火をつけ、当時の石炭レンジで火をおこす方法を教授してくれます。ここのカントリーハウスでは過去の家事を体験学習が可能でした。NationalTrustに限らず、カントリーハウスの公式サイトやメニューには、子供たちが歴史体験できるよう、教育コースが提供されていることがよくあります。

印象的なのは洗濯です。煮えたぎった鍋の中にシーツを入れて、煮沸消毒する、というこの作業。長い竿で湯を吸って重くなったシーツを取り出すのは重労働な上に、蒸気で蒸し暑く、その上、熱湯を吸ったシーツによる火傷の危険もあるなど、如何に当時のランドリーメイド(洗濯担当のメイド)たち、そして彼女らを雇えない人々が苦労していたかを知るのに、最適な情景でした。

軍人として鍛えられているはずの父Paulも、この時ばかりは疲れた表情を見せていました。当時の中流階級はメイドをひとり以上雇って、日々の家事の労苦から解放されようとしましたが、この番組のスタート時点ではメイドが不在なので、日々これら家事をこなす生活が始まるのです。

知識が無ければ家事は出来ない

そもそも、「なぜ教育を受けさせたのか?」、それは当時の家政は道具を知らない、運営方法を知らない人にとっては非常に危険なものだったからです。そして、家事は「個人個人の生活環境・生活レベル」で随分と異なっており、100年以上前ともなれば現代とルールが違うので、知識が必要となりました。

しかし、現代人だけが100年以上前の時代の家事に「無知」だったわけではありません。当時の中流階級は日本で考える「1億層中流」の「中流」と異なり、社会的な層としては20%程度ともいわれるほどで、社会的上部に属していました。貧富の差は極めて大きく、中流階級と労働者階級では生活様式が異なり、当然、家事に求められる知識にも大きな差がありました。

初めてメイドとして勤めに出る少女の多くは十分な家事教育を受けられませんでしたが、すぐに中流階級の家庭に「住み込み」で働かず、近所で通いのパートタイムをして仕事を覚えるという実地で仕事を覚える機会がありました。大きな屋敷ともなれば管理職の上級使用人や先輩のスタッフが教育してくれました。しかし、メイドをひとりしか雇えないような家庭(大部分のメイドの雇用主)では、女主人から教育を受けるか、何も教えられないか、でした。

関係ない話ですが、テレビに出てくる応募したイギリス家族は、日本の少子化とは対極的に、子供が3~4人以上いる大家族で、びっくりしました。大家族だからこそ応募資格があったのかもしれませんが、英国で執り行われた「子供手当て」の影響も子沢山に関連しているのでしょか。


1話目『出演する家族を募集』
1話目『家族が実際に暮らす家を再現する』
2話目『生活が始まる/レンジと衛生』
2話目『食べ物/買い物と食事』(2005/02/25)
2話目『洗い物は大変/衣装と洗濯』(2005/02/26)
3話目『掃除も大変/ホコリでいっぱい』(2005/02/27)
3話目『メイドさんを雇う』(2005/02/28)
3話目『肌で感じる1900年(上)/髪を洗う』(2005/03/04)
3話目『肌で感じる1900年(下)/衣食住』(2005/03/04)
最終話『メイドさんと向き合う』(2005/03/13)
最終話『End Of An Era』(2005/03/17)

旅行記:2005年秋・『THE 1900 HOUSE』の街へ行ってみた

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関連番組

『MANOR HOUSE(マナーハウス) 英國発 貴族とメイドの90日』
『Treats From The Edwardian Country House』