[映画/ドラマ/映像]THE 1900 HOUSE(01:はじめに)

1900 House [DVD]

販売元:Pbs (Direct)( 2003-08-05 )

時間:

1 枚組 ( DVD )



※このDVDはRegion1で、日本のDVDプレイヤーでは再生できません。
制作&放送:Wall to Wall/Channel 4 (1999)


1900年の中流階級家庭の生活を体験する3ヶ月

大多数のメイドの雇用主となった中流階級の生活の実像と、その職場でひとり働く「メイド」の実際の姿を知ることができた、私にとって非常に印象的なドキュメンタリーです。ちょうどヴィクトリア朝に関心を持って資料探索を始めた2000年頃、『家族で体験 1900年の生活』と題してNHK教育で放送された時に出会いました。屋敷で暮らす『MANOR HOUSE』の前身といえる作品です。

元々はイギリスのChannl 4で制作され、どういうきっかけか、日本に入ってきました。ヴィクトリア朝を題材とした映像は非常に多く、英国にとっては我々の「時代劇」感覚なのでしょう。あの頃の小説を題材とした映像は非常に多く、ディケンズやエリザベス・ギャスケルといったヴィクトリア朝を生きた作家の作品だけではなく、現代作家のサラ・ウォーターズの作品がBBCで制作されるなど、根強い人気のジャンルです。

この映像は、「ヴィクトリア朝」で連想されるかもしれない上流階級の華やかさとは無縁で、淡々と過ぎていく日常生活を扱ったドキュメンタリーです。厳しい審査を経て、Bowler家(父・母・娘3・息子1)が、1900年の英国における中流階級(私の見る限り、Lower Middle Class)の生活を体験するものです。体験といっても観光レベルではなく、3ヶ月の間、その時代の家に住み、その時代の生活レベルで暮らさなければなりません。電気もガスも無く、特に衛生観念が過去よりも発達した現代人にとって、お湯が自由に使えない境遇は、精神的に堪えるもの物でした。

特に象徴的だったのは、家の中央にある暖炉器具が不調で、お風呂で使うお湯を暖める装置が十分に機能しなかったトラブルです。湯が自由に使えない上に、髪を洗うのにも難渋し、シャンプー(当時のレシピで作成)でもかゆさが取れず、女性4人は禁を犯して、近所のスーパーへ買い物に行ってしまいます。その様子が防犯カメラに写されて、番組は終了しかけます。毎日眠る前にひとこと、カメラの前で彼ら家族はしゃべるのですが、母親の表情は疲れきり、居直っていました。番組は続きましたが、徹底的に衣装から食べるものまで再現をさせる番組で、「ここまでやるのか」と驚きました。

現代人が体験する女主人とメイドの境遇

もうひとつ印象的だったのはメイド(メイドオブオールワーク)を雇ったことです。家が、片付かないのです。炊事や洗濯、そして掃除は便利な家電が無いので時間と労力がかかり、石炭を使用している為に、家の中が非常に汚れやすくなっていました。それまで家事を担っていた女主人のJoyceは重労働に耐えかね、メイドを雇いました。

ところが、現代人としてのJoyceは、自分が背負いきれなかった重労働を、「他人に」に押し付けることに段々と耐えられなくなります。当時の女主人たちはこうしたメイドを「機械のように扱った」ともいわれています。メイドがいた時代を語る雇用主は少なく、沈黙するのは罪悪感があったからだと指摘する研究者もいます。メイドが機械であり、道具だと思うことで、無視していた側面もあったのでしょう。

一方、メイドとして雇われた女性(Elizabeth Lillington)の視点も新鮮でした。彼女は馬車馬のように働きました。非常に厳しい労働でしたし、主人のPaulから当時のメイドのように「空気のように扱われる」ことで彼女は傷つきもしましたが、仕事を投げ出しませんでした。彼女の仕事が終わったのは、Joyceによる解雇でした。職を失ったElizabethは、Joyceの決定を不満げに受け止めました。

Joyceは、メイドに仕事を「押し付ける」ことに耐えられませんでした。そして、元の重労働を行う生活を選びました。深刻な悩みをJoyceはひとりで抱えました。「女性が家事を担うべき」との当時の価値観があって、夫のPaulは仕事を持ち、外にいる時間が長く、あまり協力的ではありませんでした。「誰が家事を担うのか」という観点でもこの話は現代へと通じる話です。

「価値観」と「暮らしの温度」を容赦無く再現する、非常に厳しい番組ですが、見ている方としては中流家庭とはこんなものだったのかと、興味深いものでした。自分が暮らせといわれたら嫌なのですが……

以降、各話ごとの感想を書いていきます。

現在、旧ホームページに記載した感想を、この形へと移行・書き直し中です。古いテキストと混在しますが、今月中に完了予定です。


1話目『出演する家族を募集』
1話目『家族が実際に暮らす家を再現する』
2話目『生活が始まる/レンジと衛生』
2話目『食べ物/買い物と食事』(2005/02/25)
2話目『洗い物は大変/衣装と洗濯』(2005/02/26)
3話目『掃除も大変/ホコリでいっぱい』(2005/02/27)
3話目『メイドさんを雇う』(2005/02/28)
3話目『肌で感じる1900年(上)/髪を洗う』(2005/03/04)
3話目『肌で感じる1900年(下)/衣食住』(2005/03/04)
最終話『メイドさんと向き合う』(2005/03/13)
最終話『End Of An Era』(2005/03/17)

旅行記:2005年秋・『THE 1900 HOUSE』の街へ行ってみた

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『MANOR HOUSE(マナーハウス) 英國発 貴族とメイドの90日』
『Treats From The Edwardian Country House』