[参考資料]英国カントリーハウス物語

英国カントリー・ハウス物語―華麗なイギリス貴族の館

著者/訳者:杉恵 惇宏

出版社:彩流社( 1998-05 )

単行本 ( 292 ページ )


彩流社は『英国ヴィクトリア朝のキッチン』や、『侍女』やエリザベス・ギャスケルなどの本も出しているようで、イギリスに関する書籍が多いです。その中でも、双璧をあげるならば、『英国ヴィクトリア朝のキッチン』と、この『英国カントリーハウス物語』です。

この本はカラーページこそ少ないですが、カントリー・ハウスの歴史などは、『エマ ヴィクトリアンガイド』の主要参考文献の一つになっていたり、『図説 英国貴族の城館』とは違った切り口で記述されています。

文学を始めとして、イギリス貴族、カントリーハウスの歴史、そこに住んでいた人たち、彼らに仕えた使用人、さらには現在観光地として成立するカントリーハウスまで、幅広く扱っています。特に20世紀に荒廃が進んだカントリーハウスを巡る話は、日本では最も詳しいレベルで、参考になることが多いです。

こうした広範な知識は、筆者の杉恵先生の博識と、参考文献の豊富さにあります。久我は英国ヴィクトリア朝の使用人についてある程度、英語の資料を集めてきましたが、この方が参考にされた文献の幅広さ(200冊以上?)と豊富さには驚くばかりです。ここから選んで買うことも多く、心の中では「師匠」だと思っている方の一人です。特に屋敷の子供たちの育児やナースメイド・ナニーとのかかわりでは、ここに掲載されていた参考文献のお世話になりました。

貴族が「上流階級!」という雰囲気だけではなく、時代時代の中で成功も失敗も含めて描かれている点では、非常にバランスがとれている資料だと思います。

カントリーハウスの華麗な外面や豪奢な内装を求める人には、正直、白黒写真ばかりで物足りないでしょう。しかし、これだけ幅広い情報を、きちんと整理してわかりやすく解説している点で、カントリーハウス全般、そこでの暮らしを学びたい人にとっては、最高の良書になるでしょう。初めて興味を持ってから、数年が経過した今も、この本は手放せません。

また、屋敷の中で働く使用人とのかかわりを描いた点でも、この本に比肩する和書は『英国ヴィクトリア朝のキッチン』か、『英国のカントリーハウス』ぐらいではないでしょうか。(2010年現在は、『ヴィクトリアン・サーヴァント』が存在していますが、使用人全体を描いていますので、少し違います)

01:英国のカントリー・ハウスは「田舎の家」か
02:カントリー・ハウスの歴史をもとめて
03:城館の構造と家族
04:貴族の生活様式
05:カントリーハウスの子どもたち
06:使用人の世界
07:カントリー・ハウス・ウォッチングの歴史
08:館をめぐる畸人変人小伝
09:文学とカントリー・ハウス
10:城館の中の絵画
11:10のカントリー・ハウスを舞台に
12:訪ねてみたいカントリー・ハウス35選