[参考資料]イギリス近代史

イギリス近代史―宗教改革から現代まで

著者/訳者:村岡 健次 川北 稔

出版社:ミネルヴァ書房( 2003-05 )

単行本 ( 324 ページ )


英国近代史を日本人が学ぶ上で、最もお世話になる著書を記されているのは、村岡健次先生と川北稔先生だと個人的には思います。本書はご両名の様々な著作を分かりやすくまとめた形といえるもので、イギリスが中世からどのような発展を遂げ、19世紀ヴィクトリア朝の大英帝国を形成していったかの推移を解説しています。

イギリスが中世から近世・近代へと転換していくのは、チューダー朝といわれています。ヘンリー7世、ヘンリー8世、エリザベス1世といった王族は国内を統一し、王権と法律による支配を確立していきました。

使用人の歴史もこの流れと無縁ではありません。かつては貴族の下へ軍務を提供することで領地の保護を得ていた地主たちは、平時は貴族の家政を担っていました。これが旧来の使用人像です。

しかし、平和となって私設軍隊が解散させられた時代にあっては庇護を得るための奉公は必要ではなくなり、自主独立の道を選ぶことが可能となりました。また、軍事拠点だった城や城塞は姿を消して行き、この頃から、現代の残る英国貴族の館カントリーハウスが登場し始めます。

近世のイギリスは封建的な農村社会から転換し、次第に商工業が勃興していきます。商工業の発展では豊かになる手段・選択肢となる「職業数」を増やしました。しかし、政治面ではイギリスはヨーロッパの他国と異なり、絶対王政の道は歩まず、清教徒革命や名誉革命で王権が制限されて立憲君主制の道を歩みました。

その後の18世紀末からの産業革命による経済発展を遂げ、黄金時代のヴィクトリア朝を迎え、高度な産業発展や自由主義による矛盾に直面し、国家が諸問題の解決に乗り出す中、貴族が衰退して労働者が力を増していく時代を迎えていきます。

そして第一次大戦、第二次大戦を経て「イギリス病」といわれる状況に陥った歴史的推移は、ひとつの国が農業から商工業を経て経済発展を遂げ、やがて政府による福祉で国家財政が肥大化して発展の活力を失っていくものの、金融国際化の中で経済発展を取り戻していく流れを本書では分かりやすく伝えてくれます。

メインの先生方は個別の年代やテーマで著作を書かれているので、そこへ流れていくのも良いですし、逆に個別のテーマから通史へと流れていくのも良いと思います。今まで読んだ近現代史の本では、もっともすっきりとまとまっていますし、章単位での参考文献リストも役に立ちます。

目次

第一部 工業化前の時代

第1章 近世社会の成立

第2章 絶対王政からピューリタン革命

第3章 工業化への道

第4章 名誉革命体制の展開

第5章 前工業化時代の生活と文化


第ニ部 工業化の時代

第6章 工業化の進行と自由主義

第7章 工業化時代の生活と文化

第8章 「帝国主義」と大衆社会の到来

第9章 現代イギリスの明暗