[映画/ドラマ/映像]8人の女たち

8人の女たち デラックス版 [DVD]

販売元:ジェネオン エンタテインメント( 2003-07-21 )

時間:111 分

1 枚組 ( DVD )


『8人の女たち』は8人の女性を主人公とし、舞台となる館の主マルセルの殺人事件を巡る物語です。国は1950年代フランスで、メイドも出てきます。このメイドがとてもいい味を出していて、個人的に好きな作品です。

タイトルの「8人」はマルセルの妻、留学中の長女、屋敷にいる次女、妻の妹、マルセルの妻の母、コック、メイド、そしてマルセルの妹で、彼女たちが一堂に会したところで殺人事件が起こり、犯人捜しを行う筋立てです。

私は映画館で見に行きました。同じ時期に『ゴスフォード・パーク』があり、どこかで予告編を見て、同じような筋立て(屋敷で、当主の殺人事件・メイドさんもいる)だったこともあり、間隔をあけなければと、思って、先延ばししていました。

これが久々に「映画として面白い」ものでした。まず女優が綺麗であること、衣装も映えて、舞台となる1950年代という時代性が出ていました。ミュージカル仕立て、というのでしょうが、唐突に歌が入り、女優が踊りだし、「女優のカメラ目線」「カメラの構図も舞台らしく」正面から広く映すなど、見ていて面白いのです。そのダンスも衣装が鮮やかに見えるように、計算されています。

最初はどうしたものかと苦笑しながら見ていた舞台展開ですが、もしかすると、「一緒に踊っていない人の視点」も多用していたかもしれません。結構、不思議な「画面割り」だったので。

犯人探しの過程で、アリバイを確かめるうちに、次々に皆が他者の秘密や暗部を暴露していき、それが果たして真実かの検証もなされぬまま(クリスティ小説ですとあるひとりしか握っていない情報、それも相手から話してくれる情報は偏向しており、その話本人が犯人ということが多いですが)、定まらない方向性を描き出します。

犯人探しよりも、自分以外を犯人だと思う傷つけあう弱さが出ていて、情報が錯綜していきます。結末も見事で、トリック全盛の世界において、使い古されたかもしれませんが、(クリスティへのオマージュという点では、確かに彼女の名作にあった方法を使っています)秀逸でした。

小説も出ているそうですが、そちらは読んでいません。amazonの書評を見ると映画よりも面白いそうですが、話の筋立てより、舞台や映像への興味が強いので、小説よりも、屋敷の図や衣装が出ているという写真集を買いました。本当に写真集で、やや値段が高いのですが、オマージュしている作品への言及や絵が載っています。

8人の女たち (BOOK PLUS)

著者/訳者:佐野 晶 フランソワ オゾン ロベール トマ マリナ デ・ヴァン

出版社:アーティストハウスパブリッシャーズ( 2002-11 )

単行本 ( 214 ページ )



8人の女たち フォト・アルバム

著者/訳者:フランソワ オゾン

出版社:アーティストハウス( 2002-11 )

大型本 ( 192 ページ )


屋敷物や使用人物としては、やや現代的ですし、あまり広い空間を感じませんでしたが、肝心のメイドさんは今までに無いタイプで、よかったです。メイドの姿を「演じている」時と、その役割から解放された時の落差がいいです。

『美しき諍女』を演じたエマニュエル・ベアール(確か上映当時はヘアがどうのこうので揉めていたと思います)、とても優艶な人でした。気の強さ、非従順というものが出ており、黒いハイヒールを履いていたのが、彼女がただのメイドではないと暗示しています。衣装は黒を基調として白が見え、襟元や袖の白いカラーを外すシーンや、「娼婦」ぶりを見せるダンスのシーンでは整えていた髪が乱れ、色気がこれでもかというぐらい出ていました。タバコを吸うシーンも似合っていました。

主人公らしい長女は「オードリー・ヘップバーン」を意識した衣装ということでしたが、この長女とメイドさんのスカートは19世紀的で好みでしたし、見せ方も良かったです。とにかく、女優の見せ方がうまいというのでしょうか。

『ゴスフォード・パーク』との対比で見ると、フランスとイギリスの違いが見える、かもしれません。初めて見るならば圧倒的に映画として面白いこちらをお勧めしますが、「カントリーハウス物」としては、『ゴスフォード・パーク』の質が高いですが、映画作成の方法論やコンセプトが違う、「畑違い」のふたつを比較するのが間違っています。

『ゴスフォード・パーク』は屋敷や使用人、貴族の暮らしにスポットを当て、当時の価値観を再現したドラマですが、『8人の女たち』はあくまでも屋敷は舞台に過ぎず、女性の魅力や、極限状態での暴露される人間の怖さを追求した感じがします。世界の面白さと、映像の面白さ、筋立ての面白さ、どちらももう一度見たい作品です。

尚、パンフレットにはハイヒールを履いたメイドさんのモデルとなった映画があると書かれていました。この映画監督は過去の映画へのオマージュとしての作品が好きで、そうした遊びがこの映画を形作っているようです。その映画はジャンヌ・モロー主演の『小間使の日記』です。

ヴィクトリア朝へ還元できませんが、フランスというと鹿島茂氏の著作が多くありますし、フランスの『失われたときを求めて』では、セレスト(天空のよう)という名のメイドが出てきた記憶が。いつか、この『失われたときを求めて』の読書感想文を書きます…あれを読んでいる時間はすさまじいものがありました。

知識つながりで行くと、『失われたときを求めて』を映画化した際、出演していたのが、『8人の女たち』でメイドさんを演じたエマニュエル・ベアールでした。まだこの映画を見ていませんが(確か日本では単館上映)、amazonによると、男の主演は…ジョン・マルコヴィッチでした。衣装も凝っています。