[参考資料]イギリスの近代化遺産

イギリスの近代化遺産 (Shotor Museum)

著者/訳者:田中 亮三

出版社:小学館( 2005-12 )

単行本 ( 127 ページ )



『イギリスの近代化遺産』は『英国貴族の城館』の田中亮三先生と、写真家の増田彰久さんによる、産業革命以降に作られた「鉄とガラス」の建物を集めた解説&写真集です。田中亮三先生による近代化の歴史的経緯や建物の解説、そして水路や鉄道網の発展など近代化を知る図も充実していますし、『英国貴族の城館』のように、実際にここで扱われた建物を訪問するガイド情報も掲載されています。

 

被写体は近代化の象徴と言えるもので、これほど大規模に鉄とガラスを用いた建造物を作るには、工業の発展が不可欠でした。その結晶は、ヴィクトリア朝の頃の万国博覧会の会場となったクリスタル・パレスでしょうが、残念なことに今は残っていません。

それでも、その当時の建造物は今も数多くイギリスに現存し、そのひとつひとつを撮影したのが本書です。対象は幅広く、「橋梁」「駅舎」「炭坑」「製鉄所」「工場」「風車」「運河と閘門」「港湾」「灯台」「ダム」「下水」「給水所」「温室」「市場」「ガス・タンク」「発電所」と、目次を書き出すだけでもいろいろとあります。

個人的に好きなのは、「鉄骨による高い天井とガラス」です。表紙になっているのは王立キュー植物園を内側から見た姿で、青空が映えていますし、巨大な構造物は装飾を施しており、骨太さの中に美しさも見られます。19世紀の駅は、私の憧れであり、大好物です。今となっては巨大構造物を見慣れていますが、このような建物群が初めて登場した頃には、どのように見えていたのでしょうか?

実用的な目的で建てられた建造物には細かな「工芸」的な意匠も反映されているのが、この本を通じてよく分かります。たとえばスミスフィールド精肉市場を飾る鉄骨は色彩豊かで、格子の装飾も華やかとなっていて「精肉市場なの?」と意外な印象を与えます。

給水設備や下水処理場も、この頃には衛生観念やその必要性が高まっていたことを物語りますし、今の私たちの生活に繋がる様々な建物が歴史を感じさせます。そして、建物自体の美しさに加えて、背景となる空の青さも素敵です。