ヴィクトリア朝について


英国が『日の沈まぬ国』と呼ばれた最盛期の頃、ヴィクトリア女王が君臨した時代です。産業の勃興によって台頭したブルジョアジーと、貴族たちとが織り成す華やかな社交界があった一方、困窮した「搾取される」労働者の問題が大きくなり、社会主義・共産主義の思想が生まれました。

現在の社会福祉の概念もこの時代の社会問題への解決策として誕生しましたほどに、近代社会の華やかさと一方での矛盾とを内包した時代です。『スチームパンク』や『シャーロック・ホームズ』などもだいたいこの時代を舞台にしており、近代貴族の典型となっています。

NHKで放送された英国制作のドラマ『名探偵ポアロ』をこよなく愛し、クリスティ作品を読みふけった自分は、そこを舞台とする屋敷、貴族たちや執事、メイドの存在に興味を持ちました。TRPGというゲームが好きで、『ゴーストハンター』というゲームシステムはポアロの時代に重なる雰囲気を持ちましたので、そうした部分でも、いろいろと知りたいと思いました。

英国の華やかな生活を扱う資料を捜したところ、世に出ている資料の多くは「ヴィクトリア時代」、それを読んで近代貴族の源流が、この時代にあると知るに至りました。

ポアロの時代は第一次大戦後〜第二次大戦前、時代背景ではかなりずれていますが、屋敷と使用人、社交界の資料はヴィクトリア朝が日本でも手に入りやすく、折角だから勉強してみようと、本を買い始めたのがはまる契機です。

ちょうどよくその頃、NHKで『百年前の暮らし』と題したBBC制作のテレビがありました。英国ヴィクトリア朝の暮らしを、現代の家族が体験するという企画は非常に面白く、生活の温度が心地よかったです。それからというもの映画やドラマなどを多く見るようになり、小説も読み、さらには日本の資料では足りないと、英書にも手を出すようになりました。

可能ならばこの時代を舞台にした小説を書きたいなと思っていますので、当時の価値観や職業、生活様式を整理して形にするのは何よりも参考になります。小説そのものを書けるのがいつになるのかわかりませんが、勉強の成果として、この本が作られました。

厳密な資料本でもなく、小説もイギリスを舞台にしておりません。映画や小説を参考にしたりと、事実よりもイメージを優先して、構成されています。

完全な知識や理解を求める方は、参考文献の紹介もしていますので、そちらをご覧下さい。本書はスペースの都合もあり、翻訳本でもないので、こうした文書を読んだ上で取捨選択して書いています。こうした分野に関心のある方の導入書程度に思っていただければ幸いです。


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